メルカリ起業家の山田氏はテック界の「野茂英雄」になれるか(後)
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プロ野球の野茂英雄投手と自身を重ね合せる
山田氏が当初から目を向けるのは、CtoC市場の先進地である米国だ。創業間もない2014年9月から米国本土で、17年3月には英国で事業を始めた。山田氏は月の半分を米国など海外での事業の陣頭指揮を執る。上場で得た資金は海外に振り分ける。
NHKは番組『ビジネス特集』(18年6月19日付)で、「メルカリCEOはテック界の野茂英雄になれるか」を放映した。テック界とは、クリエイティブなアイデアが必要なテクノロジー企業をいう。開発者、技術者、デザイナー、起業家、ベンチャー投資家などがテック系と呼ばれる。米シリコンバレーはテック界の聖地である。山田氏はテック界への思い入れを語っている。
〈いまはアメリカに集中していきます。ITでいえば、アメリカで普及していないサービスが世界的なブランドになるのは考えにくいかなと思っています。フェイブックにしてもGoogleにしても、ソニーでもトヨタでも、アメリカで成功してから、それで世界的な認知にたどり着いています。アメリカは競争も激しい難しい市場で我々はまだ赤字でやっていますが、まずは、そこで受け入れられるか、この1点です〉
山田氏はメジャーに挑戦した野茂英雄氏に自身を重ね合わせる。1995年に野茂英雄投手が年俸1億4,000万円から980万円に下がりながらメジャーリーグに挑戦したとき、プロ野球界、マスコミから「売国奴」「恩知らず」「裏切り者」と一斉非難を浴びせられた。
日本のプロ球界は期待していなかったが、野茂投手は見事裏切った。時速150キロ以上の直球で三振の山を築き、メジャーリーグ・オールスターの先発投手に選ばれた。それまで、普通の米国人は、日本人が野球をやることさえ知らなかった。山田氏は、こう語る。
〈野球でいったら野茂英雄さん。始めはメジャーリーグに通用するわけないといわれるなかでアメリカに出て行って、成功をおさめた。そうすると、『じゃあ自分も!』って人が出てきて、いまでは大谷翔平さんみたいにアメリカでも驚きをもって迎えられるケースが出てきました。サッカーだって同じです。いまは海外のビックチームで活躍するのが当たり前。いろいろな日本企業がチャレンジして、成功するってことが増えてくれば、どっと増えてくると思っているので、そんなに悲観していません。自分たちとしてはかつての野茂さんのように、ITの領域でその先鞭をつけたいと思っています〉
日本はベンチャー不毛の地と言われてきた。日本からは、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドットコム、Googleは生まれなかった。メルカリの田中進太郎氏は、テック界の「野茂英雄」として風穴を開けるという。頼もしいかぎりだ。
(了)
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