2024年11月28日( 木 )

朝鮮半島3月危機説の真相(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 トランプ米大統領と金正恩委員長の発言がエスカレートし、一時期、朝鮮半島は一触即発、戦争の危機が取りざたされていた。しかし、金正恩委員長は2018年元日の新年の辞で、今までの態度とは打って変わって、韓国との関係改善を強調した。それにより、韓国と北朝鮮は今年1月にほぼ2年ぶり南北協議を再開した。それだけではなく、北朝鮮は2月9日に開幕した平昌冬季オリンピックに選手団を派遣し、女子アイスホッケーでは、韓国との合同チームを編成した。

 北朝鮮がこのような柔和態度に出ているその意図は何だろうか。北朝鮮は2017年11月29日、新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」を発射し、10回目となる国連の制裁決議を受けることとなった。米国を始め国際社会が北朝鮮への圧力を強めたことにより、北朝鮮は国際的な孤立を深めている。孤立を避けるために、北朝鮮に融和的であり、かつ唯一、同情的な韓国政府をターゲットにし、米韓の連携を分断したいという狙いがあるのだろう。

 平昌冬季オリンピックでは金正恩委員長の妹を送り、特使の派遣を打診してきたし、国連総長宛に手紙を出し、米国による核挑発の抑止を頼んでいる。核開発を保持することで体制維持をしようとした北朝鮮はそれが裏目にでて、相当慌てているようだ。北朝鮮がこのように態度を変えたのには、いくつかの理由がある。北朝鮮が核とミサイルの開発を加速させている中、米国では北朝鮮に対する先制攻撃を含むいろいろな選択肢が議論されているからだ。

 とくに、最近「ブラッディ・ノーズ(血だらけの鼻)」という北朝鮮の核関連施設をピンポイントで先制攻撃する軍事作戦が議論され、北朝鮮に米国の怖さを知らしめようという動きがあるからだ。北朝鮮が核弾頭を載せた大陸間弾頭ミサイル(ICBM)でアメリカの首都ワシントンを攻撃できるようになるのは今年3月頃なので、 アメリカは北朝鮮のそのような行動を阻止できる時間があまりないと、米国のCIAがトランプ大統領に伝えたとイギリスの新聞が報じている。

 アメリカは北朝鮮が核開発を凍結しただけではダメで、核を完全に破棄することを北朝鮮に求めている。しかし、北朝鮮が核の全面廃棄に応じる可能性はほぼないと見られている。米国は地域を限定してピンポイントの先制攻撃を含めたいろいろな選択肢を検討している反面、北朝鮮は融和作戦で、韓国を利用し、米韓日を分断させながら、自らの目的を達成するための時間稼ぎを画策しているようだ。

 米国は今まで何回も北朝鮮を攻撃しようとしたことがある。1968年にアメリカ海軍の情報収集船であるプエブロ号が北朝鮮に拿捕されて乗組員が1年以上抑留されたことがある。1969年には米国の偵察機を墜落させたことがある。しかし、米国はこの時期、ベトナム戦争中で北朝鮮に対して何の報復もしなかった。

 1976年にはポプラのまさかり事件で、北朝鮮がアメリカの陸軍士官2名を殺害した。この際、米国は航空母艦と爆撃機を送ろうとしたら、金日成委員長が直接謝るなどの低姿勢にでた。それだけでなく、米国は1994年に北朝鮮に対して先制攻撃を計画した時期もあった。1994年第一次核危機のときである。アメリカはすべての準備が整い、クリントン大統領の決断だけを待っていたが、それを聞きつけた韓国の金永三大統領の訴えで先制攻撃は中止された。「その時に先制攻撃をしていれば、良かったのに」という向きもある。

(つづく)

 
(後)

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