中国で急激に浸透したQRコードの今後の課題(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
QRコードでモバイル決済をするためには、モバイル決済に必要なアプリを自身の端末にダウンロードし、次の2つの方法で決済を進める。自身のスマホにQRコードを表示させ、店舗の端末で読み取ってもらうか、店舗に表示されているQRコードを自分のスマホで読み取り、金額を入力して支払いを済ませる方法である。
現在の主流は前者だ。後者の場合、セキュリティの問題があるため最近、決済金額を500元に制限すると中国政府が発表している。 いずれにしろ、中国では、ありとあらゆる場面でQRコードを用いたモバイル決済が利用されている。デパートやスーパー、コンビニなどの買い物やレストランでの食事などはいうまでもなく、タクシー代や駐車場料金の支払い、ガスや水道、電気といった公共料金の支払い、さらに アプリのダウンロード、会員管理、チケット購入など利用方法は非常に多岐にわたっている。QRコードを利用することによって、現金の受け渡しをする必要がなくなり、決済が効率化するし、店舗側ももらったお金を保管しなくてもよいので、利便性がとても高くなるからだ。
それに、中国語は入力がかなり難しく、QRコードならスキャンするだけで入力が済むのも中国人に受けている理由なのかもしれない。またQRコードは店舗側は読み取り端末の費用などをあまり気にする必要がないことも、普及に拍車をかけているに違いない。それでは、中国でこれほどまでにQRコードが浸透した理由はなんだろうか。
中国に電子決済の既存インフラがあまり整備されていないことが、ここまでモバイル決済が広まった理由の1つと考えられる。それに、中国はクレジットカードの普及率が低い。
QRコードの場合はクレジットカードに加入しなくても使えるし、スマホを持っていて、銀行口座を持っていれば利用可能なので、クレジットカードを発給してもらうことより、ハードルは低くなる。さらに、日本や韓国では考えられないことだが、中国では偽札の問題もあり、偽札を掴まされるリスクよりは、こちらの電子決済のほうが店舗側にとっては安全というわけだ。それに、アプリをダウンロードすれば大半の機種で利用できるのも、QRコードのメリットの1つだろう。QRコードの浸透とともに、問題も発生している。すなわちセキュリティの問題が露呈しているのだ。QRコードにウイルスまたは有害ウェブサイトのアドレスを盛り込む行為が問題となっている。
QRコードはクレジットカードに比べてウイルスに感染されやすいという。それだけでなく、QRコードの上から詐欺サイトへとつながるQRコードを貼ることで他人のお金を騙し取る被害も報告されている。最も被害が多いのは、店頭に貼ってあるQRコードを別のものにすり替える手口で、QRコードがハッキングされると、店の売上が犯人の口座に入ってしまうのだ。QRコードは複雑で、自分のものかどうか見分けが付かないので、このような被害が急増し、中国政府もQRコードのハッキングに頭を抱えている。中国政府はこのようなセキュリティ問題を解決するのに躍起になっている。セキュリティ問題が解決されるかどうかが、今後 QRコードが世界的に普及していくかどうかの鍵になるだろう。
(了)
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