2024年11月24日( 日 )

九州地銀(18行)の18年3月期決算を検証する(5)

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(4)コア業務純益について
コア業務純益=「業務純益」+「一般貸倒引当金繰入額」-「国債等券関係損益」-【有価証券関係の金融派生商品損益】-「経費」で算出される。表は一時的な変動要因を取り除いてコア業務純益=コア業務粗利益-経費となっている。
★コア業務純益は一般企業の営業利益にあたる。銀行の本来業務である貸出金と預金の利鞘であり、その銀行の収益力がわかる。日銀のマイナス金利政策の影響を受けて縮小傾向となっている。
フィナンシャルグループ(FG・FH)のコア業務純益(連結)順位表  【表1】を見ていただきたい。

~この表から見えるもの~
◆1位はふくおかFG。前期▲338億円だったため、前期比+1,078億円の740億円。
・2位は西日本FHで前期比▲4億700万円の351億円。
・3位は九州FGで前期比+19億5500万円の310億円。
★ふくおかFGが前期大幅な赤字となった理由について触れておきたい。ふくおかFGは2007年4月に福岡銀行と熊本ファミリー銀行(現・熊本銀行)が経営統合するための持株会社として設立された。同年10月、長崎に本店がある親和銀行を統合。統合時点の「負ののれん代」1,834億円を統合後10年間で累計886億円償却。残り948億円を今後さらに約10年をかけて年間92億円ずつ均等償却する予定を変更し、一括償却したために338億円の赤字となった。

◆ふくおかFGのコア業務純益が急回復したのは、グループ全体が危機感をもち、貸出金を大幅に増強したからではないだろうか。ふくおかFGの貸出金(連結)は前期比+8,022億円。それに対して西日本FHは前期比+2,377億円。九州FGは前期比+3,757億円。3グループの増加額1兆4,156億円のうち、ふくおかFGが56.7%を占めているのがわかる。

フィナンシャルグループの預貸金について  【表2】を見ていただきたい。

◆ふくおかFGについて
貸出金合計は前期比+8,226億円の12兆3,773億円。一方総預金は+4,984億円の14兆1,301億円。そのため預貸率は84.8%から87.6%に上昇。表にはないが総預金のうち、コストの高い譲渡性定期預金(NCD)は前期比▲852億円の3,105億円。コア業務純益の増加を意識した動きが読み取れる。

◆西日本FHについて
貸出金合計は前期比+2,671億円の7兆787億円。一方総預金は+3,242億円の8兆3,830億円。そのため預貸率は84.5%から▲0.1%の84.4%になった。総預金のうち、コストの高いNCDは前期比+168億円の4,275億円となっている。

◆九州FGについて
貸出金合計は前期比+3,751億円の6兆4,862億円。一方総預金は+2,932億円の8兆5,907億円。そのため預貸率は73.6%から1.9%上昇して75.5%になった。総預金のうち、コストの高いNCDは前期比▲1,532億円の2,330億円と大幅に削減している。ふくおかFG以上にコア業務純益を意識しているように見える。

◆フィナンシャルグループ(FG・FH)の18/3月期の貸出金合計は25兆7,180億円。グループ以外の銀行(11行)の貸出金合計は10兆7,267億円であり、3グル―プのシェアは70.5%となっている。またグループの総預金合計は30兆9,964億円に対して、グループ以外の銀行の合計は14兆8,336億円であり、グループの比率は67.6%となっている。預貸金のシェアは今後さらに上昇するものと見られる。九州地銀の経営統合が次の段階に入る予兆なのかもしれない。

<まとめ>
3フィナンシャルグループ(FG・FH)のコア業務純益合計は1,402億円。そのうちトップのふくおかFGは740億円。2位の西日本FHは前期比▲4億700万円の351億円。3位の九州FGは前期比+19億5,500万円の310億円となっており、コア業務純益においても一強二弱となっている。

(つづく)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

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