2024年03月29日( 金 )

「廃業」の西中洲樋口建設、県との関係に疑念

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 突然の「廃業届」提出で業界を驚かせた「西中洲樋口建設」の現代表が、下請業者を集めた会合で廃業の経緯について説明し、新たに建設業の許可が「7月20日前後に下りる」と明言していたことがわかった。
 建設業の許可は県の所管事項。許可するかどうかの判断について事前に通知することはなく、西中洲樋口側と県との間に、裏の話があった疑いが生じている。

 当時の代表・横尾氏が女性に対する暴行で罰金刑に処されており、廃業届けの提出は取り消し逃れだった可能性が高い。許可を行う福岡県は、その可能性を鑑みず、経営管理責任者や専任技術者の有無など形式的に審査して許可もやむなしと考えているのだろうか。取り消し逃れの廃業という悪質な脱法行為が疑われるにも関わらず、県は一貫して「処分はできない」の1点張りだ。

 同社の現代表・樋口征男氏は、先月25日、集まった下請業者を前に次のように話していた。

・選択肢が2つしかなかった。行政処分による許可の取り消し、もしくは自主的に廃業届を提出する。もう少し早く我々が知っていれば、手の打ちようがあったが、(前代表の暴行事件について)5月11日に初めて聞いたもので、約1年まったく知らなかった。

・法務局の手続きが終わり、県に(廃業)申請をした。6月14日に県の再調査を受けて、何ら問題ないはずだ。社長も交代した。あとは、7月20日前後に許可が下りる。

 樋口氏の発言中、「6月14日に県の再調査を受けて」というのは、建設業の許可申請を受けた県による立ち会い調査のこと。「何ら問題ない」とも述べていたが、この段階で前代表が罰金刑になっていたことを県側に知らせた形跡はない。

 問題は、その後に出てくる『7月20日前後に許可が下りる』という一言だ。なぜ、具体的な月日と許可取得を断言できたのか――。

 考えられるのは、許可を出す福岡県が西中洲樋口建設にそう伝えたか、もしくは樋口氏が嘘をついているかのどちらかということ。県の担当課は、「7月20日前後に許可が出るとは言っていない」と事前通知を否定するが、樋口氏が下請にすぐバレるような嘘をついたとは思えない。

 福岡県知事の建設業許可については、申請から取得までの標準処理期間を新規許可取得の場合「60日」としている。これまで、60日をわずかに切ることはあっても大幅に短縮されたことはなかったという。

 西中洲樋口建設の許可申請日は不明だが、申請には法人の商業登記簿を添付しなければならない。横尾氏の退任および樋口氏の就任による役員変更登記が5月22日に申請されており、登記完了まで10日ほどかかることから、許可申請は6月初旬だったとみられる。これに標準処理期間を加えると、許可取得は8月初旬ということになる。

 申請から約50日となる「7月20日前後に許可取得」というのは難しいとみられるが、「罰金刑を受けたら2週間以内に県に報告」するという建設業法の規定を無視した西中洲建設の脱法行為は明らか。県には、廃業前後の経緯を踏まえたうえでの判断が求められる。

【特別取材班】

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