2024年11月21日( 木 )

ワークマン 躍進の原動力とは

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プラスはなぜ売れたか

 「WORKMAN Plus」への転換で、快進撃を続けるワークマン。九州ではまだ馴染みが薄いが、全国に850店以上を展開するアウトドアウェアと作業用品店で、この業界ではダントツ1番の企業だ。九州でお馴染みの無法松の店舗数は50店とその差10倍以上だ。

 関東地区などでは長年放送されている、吉幾三が歌うオリジナルソングのCMでも知名度を上げ、店に行ったことはなくても誰もが知っている馴染みの店だった。

 そのワークマンが数年前からファッション性・カジュアル性も重視した商品づくりに転換。もともと頑丈で高機能で、使い勝手抜群の衣料がおしゃれになったとあって、そのままプライベートにも使う客が増えた。

 18年9月、満を持してアパレルショップ風に転換した「WORKMAN Plus」をららぽーと立川立飛に出店。あのワークマンが「変わった」と話題になり、瞬く間にブレイクするとともに、機能性に目を付けた女性客からの人気が急上昇した。 

 利用客層とは裏腹に、知名度だけが異常に高かった同社が、そのブランド力を実力に変えた瞬間だった。

従来の店舗と「WORKMAN Plus」では取扱商品、品ぞろえはまったく同じ。変わったのは商品の陳列や訴求の仕方。作業着店ではあまり活用されないマネキン陳列も行った。

 一般のアパレル店舗と違うのは、ファッション性はあるが最新の流行を追っていない所で、流行を取り入れて、短期間で商品を入れ替えていくファストファッションとの最大の違いだ。

 シーズン終了しても翌年そのまま販売することができるデザインで、値下げ売り切りを行わないうえ、従来からの主力客層からの作業着としての売上も確保されていて、安定した利益の確保ができる。

 そのため、売価設定を低く抑えられ、ワークマン人気を支えた「こんなに高機能でこの価格」が実現できた。要はユニクロがその初期に成長の原動力とした「そこそこおしゃれなのに安い」を、作業着性能のままで実現したのだ。

ワークマンがプラスで拡大したもの

 当たり前のことだが、客層を広げることは客数を増加させることに直結する。競合云々の前に、わが店の顧客の対象となるかどうかである。客層を決める最大要素は取扱商品や品ぞろえだ。

 ラーメン店とイタリア料理店、どちらの客層が広いかといえばラーメン店だろう。価格面では、1杯1,000円のラーメン店よりも500円の店のほうが客層のほうが広くなる。このほか店舗面積や、商品の提供方法、店の雰囲気などが客層の広さに影響を与える。

 店舗づくりの第一は、どの客層を狙うのかという、ドラッカー風にいえば顧客を定義するところから始まる。品ぞろえや価格帯は客層に合わせて決めていく。

 「何でもあります」とうたい、何から何まで万遍なくそろえた佐賀本社の企業があったが2000年代初頭に消えた。宗像店の鍋売り場には一般家庭用はもちろん、夏でも土鍋をそろえ、業務用では中華なべや1mもあるような寸胴鍋など100種類以上そろえていた。

 単純に品種や品目を増やすことは客層を広げることにはつながらない。あらゆる客層に向け、それぞれが必要なものを無尽蔵にそろえた、なんでもある店は、誰にとっても「自分の店」には見えない。では「客層を広げる」にはどうすればよいか。

 その1つは用途を広げることだ。誰もが必要とする商品を扱うのだ。性別、年齢層、所得層、など、影響を受ける要素は少なくなればなるほどいい。「男性しか使わない」「若者しか使わない」「高所得者しか使わない」からの転換だ。

 ワークマンは品ぞろえをまったく変えずに客層を広げた。商品から顧客を逆算し、この層も顧客に取り込めるはずだと踏むと、その顧客に合わせて商品のテイストと訴求方法を変えた。

 これまで顧客対象となり得なかった人々の「ワークマン」に対する印象を変えて、一気に客層を拡大した。男性ばかりだった店に女性が押し寄せ、作業着として売れていた商品が、高機能なカジュアル・アウトドアウェアとしても売れるようになった。

 居酒屋がランチ営業、コンビニの薬販売、女子校の共学化。それぞれ客層を広げる事例だが、新たな作業や現場の負担、経費が増える。ワークマンは何も増やさずにプラスに転身した。あらゆる業種が範とすべき転身がプラスだ。

ベイシアグループの中核企業

 ワークマンの本社は群馬県伊勢崎市。関東を始め全国的に有名な作業用品店であるとともに、北関東ではお馴染みの「ベイシアグループ」の中核をなす企業だ。グループで九州まで進出しているのはホームセンターの「カインズ」 ベイシアグループには
・ベイシア:食品スーパー・SC運営
・カインズ:ホームセンター
・ワークマン:作業用品店
・セーブオン:コンビニエンスストア
・オートアールズ:カー用品店
・ベイシア電気:家電店
を中核に、フードコート内飲食店の運営会社や、アミューズメントの運営会社、物流会社などもグループにもち、グループ企業だけでショッピングセンターが成立し、その周辺事業まで自社で補完できる。御三家はやはり「ベイシア」「カインズ」「ワークマン」だろう。

 これら29社で構成するベイシアグループが特異的なのは、吸収合併でなく、部門拡大や新規事業の分社化など自社内だけで発展的に成立してきた企業グループという点。

 創業者は土屋嘉雄氏。1959年に群馬県伊勢崎市で食品スーパー「いせや」を開店して今年で60周年を迎えている。当初の社名は「いせや」で、今でもその名残で「いせやグループ」と呼ぶ関係者や地元客も多い。

 78年に「いせやホームセンター」(カインズホームを経て、現・カインズ)、80年に「職人の店ワークマン」(現・ワークマン)、83年に「セーブオン」、85年に「いせや電機センター」(プラグシティを経て、現・ベイシア電器)と次々に新業態を手がけ、育ててきた。

 19年2月末のグループ売上は8,887億円、うちベイシアは2,841億円、カインズは4,214億円、セーブオンが485億、ベイシア電器が163億円、オートアールズが129億円、ワークマンの497億円となっている。

 ワークマンはフランチャイズ事業であり、企業としての売上は加盟店への卸の売上と一部の直営店売上を計上している。ワークマンチェーン全体の店舗売上高は930億円となっている。

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