2024年05月12日( 日 )

【福岡・小笹】公園多く閑静な中央区の住宅街

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起伏に富んだ小笹エリア
起伏に富んだ小笹エリア

住民目線の「小笹」

 「小笹」というまちは、福岡市民ならば地名くらいは聞いたことがあるかもしれない。だが、よく知っているという人は少ないのではないだろうか。ここでは、小笹に24年間住んでいる筆者が、小笹のまちについて紹介したい。まずは、小笹がどこにあるのかを簡単に説明したいのだが、残念ながら自慢できるようなランドマークがほとんどないのだ。自虐に捉えられてしまうかもしれないが、そこに住んでいる者がいうのだから、間違いないのである。あえていうのならば、小笹団地か福岡市動物園が近いことくらいだろう(動物園の住所は実際のところは南公園であり小笹ではない)。

 福岡市中央区小笹は1丁目から5丁目まであり、何とかそのエリアにある代表的なものをピックアップしてみた。1丁目:鴻巣山展望台、2丁目:小笹南公園、3丁目:無名の激坂(後述)、4丁目:小笹中央公園、5丁目:福岡市植物園。多くの読者が、植物園以外はどこなのかわからないのではないだろうか。福岡市中央区という真ん中っぽいイメージのなか、あまりメジャーではないことは住人として理解している。

 小笹は天神、博多などのベッドタウンとしての要素が大きく、比較的低層のマンションや戸建が多い住宅街だ。マンションはワンルームよりもファミリー向けの住宅が多い。斜面が多く、見晴らしが良いことはメリットとして挙げておきたい。主だった道路は筑肥新道のみで、夜中には自動車の交通量が少なく、自動車やバイクによる騒音や振動に困っているという話も聞いたことがない。

【小笹の余談】注意したい小学校区

 小学校は小笹小学校、中学校は平尾中学校の校区である。それぞれの学校は中央区平和にあるのでお隣の地区に行くことになるのだが、実は小笹の近くにはもう1つ小学校がある。それが笹丘小学校なのだが、同校に近い場所だと小笹4丁目のある家から笹丘小学校までわずか200mなのに対して、小笹小学校に通うと1.2kmと格段に遠くなる。小学校も中学年以上ならばさほど気にする距離ではないものの、入学したての1年生にとっては、毎日片道1.2km歩くのはかなり大変だ。通える学校がある程度選べるともっと良くなるのに、と考える親は多い。

公園が充実

筑肥新道
筑肥新道

    1~3丁目と4~5丁目を隔てるように通っているのが、筑肥新道だ。これは約40年前に、国鉄筑肥線の線路が道路になったものだ。旧小笹駅は現在公園になっており、近隣住民に親しまれている。ただ、そこがかつて駅だったことを知る住人も少ないだろう。

 公園はほかのエリアと比べても多いほうではないだろうか。主だった大きな公園としては、小笹中央公園、小笹南公園、鴻巣山緑地の一部、あとは公園に含めてしまっていいのかわからないが、福岡市植物園もある。その他、比較的小さな公園として、小笹北公園、小笹公園などもある。

 小笹中央公園に遊具はないが、ボール投げができて犬の散歩ができる貴重な公園だ。夕方には犬を連れて散歩している人もよく見かける。また、春夏には広い原っぱに簡易テントを持ち込んでデイキャンプを楽しむ人もいる。そんなことができる公園は、福岡市内でも数が限られる。

 小笹南公園は、目先の亀公園だけ見て「小笹南公園って小さい公園だなぁ」と思われる方もおられるかもしれない。しかし、小笹南公園の本体は背後の山であり、かなりの広さなのだ。小さい山1つ全部が公園なのである。

小笹中央公園
小笹中央公園

ピックアップ

 筆者はクロスバイクに乗る関係で、坂には敏感だ。福岡市内は裏の道まで走りつくしている。そんななか、福岡市内でインパクトがある坂3つをピックアップするとしたら、小笹のこの激坂は間違いなくそのなかに含まれる。壁のようにそそり立つ坂の画像は、一見合成かと思われるかもしれないが、現地に行くとそのままの光景が見られて圧巻だ。

無名の激坂
無名の激坂

小笹団地の歴史

小笹団地
小笹団地

     旧小笹団地の一部が解体され、一部余剰地は(株)えんホールディングス(福岡市博多区)が取得。2023年2月から「(仮称)エンクレストガーデン福岡」(364戸)の建築工事が開始される。小笹地区唯一のランドマーク・小笹団地が新たなランドマークに姿を変えようとしているのだ。ここで一度、小笹団地について振り返ってみたいと思う。

 1956年から96年までの約40年をかけて、54棟978戸が福岡県住宅供給公社によって建設された。これは同社のなかで最大規模の賃貸住宅団地だという。1年ごとに約200戸ずつ建設し、最初の4年間で全体の89%である48棟845戸が建設された。そして、67年に1棟16戸、73年に4棟78戸が追加で建設された。国土地理院が提供する航空写真を見ると、たしかに56年の小笹は自然豊かな森林で、そこを切り拓くところからスタートしたことがわかる。5年後の61年における航空写真と比較するとわかりやすい。これを見ても、小笹団地の発展は小笹地区全体の発展だったと言っても過言ではない。

1956年の工事前の小笹団地の航空写真
1956年の工事前の小笹団地の航空写真
1961年の工事開始から5年後の小笹団地
1961年の工事開始から5年後の小笹団地
3番館(左)2番館(右)
3番館(左)2番館(右)

    団地北側エリア第1期(1番館、2番館)は「スマートウェルネス住宅等推進モデル事業」、第2期(3番館)は「賃貸共同住宅における燃料電池を利用したエネルギー融通プロジェクト」と題して、いずれも国土交通省が進める事業に参画している。これらを簡単に説明すると、前者はサービス付き高齢者向け住宅18戸の整備と多世代交流を目的とした「小笹みんなの食堂(子ども食堂)」、障がい者の自立を目的とした「放課後等デイサービス事業所」「障がい者就労継続支援B型事業所」などの併設。買い物難民の救済を目的とした「会員向け在宅総合支援サービス」の提供なのである。後者は、賃貸共同住宅での燃料電池による余剰電力の融通とMEMS(使用電力の見える化)の推進・検証を行っている。具体的には、ファミリー向けの住居に燃料電池を設置し、少人数世帯には潜熱回収型ガス給湯器を設置して、余剰電力を他の世帯に融通する取り組みだ。

(仮称)エンクレストガーデン福岡 概要

所在地 :福岡市中央区小笹4丁目
構造・規模:RC造(一部S造)  地上14階・地下1階建
高 さ:47.34m
敷地面積:1万8,067.51m2
総戸数 :364戸

エンクレストガーデン福岡建設予定地

小笹の交通事情

 小笹団地は、団地マニアによく知られる「スターハウス(上から見ると「Y」のかたちをしている建物)」など、当時の最先端の建物が建設された。
<参考「団地マニア必見! 建替え前に見ておくべき小笹団地」(I・Bまちづくりvol.42掲載)

 約40年前、小笹には旧・筑肥線が走っていた。線路だったところは一部が道路になり、小笹団地の住人の主な公共交通手段は電車からバスに変わった。天神まで直線距離にして約4kmで、天神・博多駅に向かうバスは1日200便(片道)あるというのに、あまり交通の便が良いと感じないのはバス停の位置の問題だろうか。地下鉄を利用する場合は、地下鉄七隈線・桜坂駅が最寄り駅となる。距離にして約1.5kmだが、山を1つ越えていくような格好になるので、数字以上に遠く感じる。小笹に住む筆者としては、現実問題として自動車をもっていないと不便に感じることも多い。

 筆者は団地出身ということもあり、ほかの地区の団地も見て回ることがある。団地といえば、団地の敷地内にスーパーがあることが多い。それだけの人間が生活をしているのだから、食品など生活必需品を買う消費は必ず発生するからだ。しかし、小笹団地はその規模に反して敷地内にスーパーがないのだ。近隣にコンビニは1件あるが、これも数年前にやっとできたものだ。小笹団地の北側から最寄りのスーパーまでは約1km、歩道も比較的狭く、年配者にとっては少し厳しいかもしれない。これは今後の課題の1つだろう。

 冒頭で少々自虐的に「小笹には何もない」と述べてしまったが、住民目線でも「住みやすい環境」が整っているまちだ。良い意味で変化が少なく、安心できるまちである。また古い関係に縛られて息苦しい思いをすることもなく、気楽に住めるメリットもある。どんなところでも住めば都とはいうのだけれど、筆者が24年間も同じ場所に住んでいるのが、答えになっているのではないだろうか。

【外部ライター・奥野 晃市】

住民による小笹評価

30~50代の主婦を中心に、小笹に住むご近所さん36名に小笹について聞いた。

・良いまち(36名!)
・静かで住みやすい(18名)
・買い物が近場で住む(10名)
・公園が多い(9名)
・治安が良くて安心(6名)
・今後、劇的な再開発がなさそうなので安定している(1名)
・天神、博多へのアクセスが良くない(12名)
・小笹交差点付近で朝の渋滞が多い(8名)
・食べ物屋さんが少ない(3名)
・コンビニがもっと近くに欲しい(2名)

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