2024年05月22日( 水 )

福岡県立城南高校OBの皆さん、OBの政治家不在のままでよいのか?(後)

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社会貢献をする人材の育成が目標

 城南高校が、新設校にもかかわらず、福岡都市圏の県立高校のなかでも修猷館などの伝統校に次ぐ進路実績を誇るのは、1995年から全国に先駆けて開始されたキャリア教育「ドリカムプラン」の取り組みによるものが大きいと指摘する同校のOBや教職員が多い。

 語源である「Dreams come true」とは、夢の実現を意味する。同校では、高校3年間は、自分の夢を実現するためにあると位置づけている。

 「将来何になりたいのか」「進学してどのようなことを学びたいのか」について、座学による一斉授業だけでなく、職業インタビューや職業講演会、大学教員を招いての学問講座、志望学部を同じくする生徒が共同で行う課題研究、ディベート大会、小論文コンクール、オープンキャンパス参加など、実践的な取り組みが数多く行われている。

 2002年には、中央教育審議会の高等学校教育部会において、同校の主幹教諭(当時)によりドリカムプランについての事例発表が行われている。城南高校が考えるキャリア教育は、「広く社会への貢献を志す有為な人材の育成」にあるという。

音楽・芸能など多彩な人材を輩出

 同校はこれまでに2万4,060人の卒業生を輩出している。生態学者として知られる山下洋京都大学名誉教授をはじめ、日本レコード大賞を受賞した「愛は勝つ」を始めとしたヒット曲の作詞・作曲を手掛けたシンガーソングライターのKAN、ロックバンド・スピッツのボーカリスト兼ギタリストの草野マサムネなど、音楽・芸能関係者が多い。また、テレビ西日本の『福岡NEWSファイル CUBE』などの気象情報を担当する気象予報士の手嶋準一氏も同校OBである。

 一方、政治分野の人材に関しては、同じ学区に修猷館があるためか、まだ少ないようだ。同校の卒業生によると、国会議員はおらず、地方議員では、元福岡市議会議長・小畠久弥氏と、福岡市議会議員・堤田寛氏(いずれも自民党)の2人だけだという。

 同校の掲げる「広く社会への貢献を志す有為な人材の育成」という理念を考えると、国会議員ゼロで地方議員が2人というのはあまりにも寂しい。

12年の秘書経験から国政へ

    自民党の派閥政治資金問題で、衆議院の解散総選挙が近いともいわれるなか、城南高校の卒業生で政治を志す前途有望な青年がいると聞き、先日、お会いして話を聞いた。

 その青年とは、立憲民主党の福岡1区総支部長・丸尾圭祐氏である。同氏の経歴を紹介したい。1982年、福岡市西区の能古島で漁師を営む両親のもとに、1人息子として生まれた。中学2年のときに生徒会長に立候補し当選。公約であった男子の丸刈りなどの校則の廃止を実現させた。このときの経験が、政治家を志す原点になったのだろう。

 98年に城南高校を卒業し、2001年に九州大学21世紀プログラム過程に入学。04年に交換留学生としてアメリカ・ミシガン大学に留学後、06年に東京大学大学院で公共政策学を専攻している。10年に国会議員政策担当秘書の資格試験に合格し、11年から、当時、経済産業大臣政務官を務めていた田嶋要衆議院議員(旧・民主党)の政策秘書を12年務めた経歴をもつ。

 丸尾氏は、20代から政治の道を志し、12年間政策秘書を務め、立憲民主党の公募に応じて、地元福岡に帰郷、政治活動をスタートさせた。しかし、国政の道を目指すことへの不安はなかったのだろうか。

 丸尾氏の妻は、高校時代の同級生で、福岡で政治の道に進むことに賛成してくれたという。子どもは、2歳から6歳の男の子が3人。選挙区内各所で辻立ちや支持者へのあいさつ回りなどを行いながら「夫婦で、家事や育児を協力して取り組んでいる」と語った。

 選挙区である福岡1区は、丸尾氏が秘書を務めた田嶋議員の選挙区(千葉1区)と同じく、都市型選挙の地域で、3代にわたる地盤を持つ自民党現職が、博多区を中心に強固な支持基盤をもつ。また、旧民主党の松本龍元復興大臣の地盤であった地域でもある。

 東区のアイランドシティエリアは、人口が急増し、今春、新しい小学校が開校した。また、九州大学箱崎キャンパス跡地において、AIなどを駆使したまちづくりが進められようとしているなど、しがらみにとらわれない住民が増えている地域でもある。28日に行われた衆議院の3つの補欠選挙で自民党が全敗し、立憲民主党が全勝したことは、丸尾氏にとって追い風になることは間違いない。

 丸尾氏が目指す政治はどのようなものか。「これまでの政治は、人を大事にしない政治でした。生まれた環境によって受けられる教育が左右されてしまい、結果として能力が発揮できない状況があった」と述べ、「賃金が上がらないことで個人消費も伸び悩み、女性の幹部登用も少ないなど、本来の日本社会の実力を発揮できていない」と現状を指摘した。

 そのうえで「多様なライフスタイルや意見を反省させる仕組みをつくりたい」「誰もが安心できる綻びのないセーフティーネットを構築し、公平な税制と再分配を行う政治にしたい」と語った。

 自民党長期政権に多くの国民は不満や反発を抱いているが、まっとうな政治を実現させるには、世襲政治家ばかりでは、変化を起こすことができない。

 丸尾氏は、漁師の1人息子に生まれ、母親が亡くなった後は、父子家庭で育った経験をもつ。さまざまな家庭環境の経験を持つ政治家がいま求められている。

 城南高校OBの皆さん、ぜひ、丸尾氏を国政に送り出し、日本の停滞した政治を変える一歩を踏み出していただきたい。

(了)

【近藤 将勝】

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