【特別レポート】ハワイは極楽(後)~「第98回ライオンズクラブ国際大会inホノルル」に参加して
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取りに取り上げるチップ
ホテルからワイキキの浜へすぐに直行できるのが、この場所の強みである。女性たちが水着で通りを闊歩する様を見ると、目がそちらに移る(もちろん、薄いガウンをまとっているが――)。最初の1日目は、自分のスケベ根性を恥じ入ったものである。しかし、滞在が4、5日目になると、もう慣れっこになってしまい、目移りもしなくなった。慣れれば刺激も感じられなくなったということだ。彼女たちが水着姿で平然と公道を歩けられるのは、治安が卓越している証拠である。たしかに夜中でも安心して一人歩きできる。
治安は良く、ひったくりやスリに会うケースは稀有なホノルルであるが、チップの収奪には頭にくる。もともと、このハワイは独立王国であったのを、アメリカ政府が1898年に植民地として収奪した。1880年代には、ハワイ王朝は日本との連邦政府樹立の誘いをかけたようだが、日本側が躊躇した経緯があるそうな。当時のアメリカ政府の強欲な姿勢は、スペインとの領土をめぐる戦争に圧倒的な勝利を収めた。結果、1900年にフィリピンへの侵略に成功したのだ。
その略奪の本性が、現在のチップ制に脈々と流れている。ホノルル最後の晩餐を6人で楽しもうと、人気のステーキレストランに座った。日本でも店舗展開しているそうな。肉の味はまずはグッド。最終的な支払いになった。580ドルである。日本円に換算すると約7万円になる。1人当たり1万2,000円弱。『少し高いなー』と思っていたら、支払担当者が「チップを65ドル取られた」と語った。「チップを引けば515ドル。円換算すると約6万1,800円。1人当り約1万円か。これならば妥当なところか」と、内心納得したものだ。日本の場合、チップ類は気遣い(心尽くし)として支払うものである。『いやー素晴らしい料理とサービスを提供いただき、感謝します』という気持ちになり、サービスを受けた側が支払うものだ。
ところが、ハワイ・アメリカではサービスの中味は関係なく、「うちのレストランに座った以上、サービス料として18、いや20では足りない、25%を寄こせ」と強要する。ハワイを収奪したのと同じ感覚である。『先にまず尽くして、相手がくれる判断に任せる』日本の精神文化と、『我が店に寄ったならばチップを取り上げる』アメリカの収奪文化とでは、決定的に相容れない異質な差がある。そして物価が高い。1人当たり、昼食は6,000円、夕食は1万円の覚悟が必要である(生ビール2杯分も含む)。要因としては、「円が1ドル80円から120円に50%弱くなったからだ」と挙げられる。それも正解だが、真意のところはこうだ。アメリカはこの20年間、年平均2%の物価の値上がりが続いた。逆に日本は20年間、物価が下がった。そうなると、物価の高さのギャップが生じるのは当然である。まー、4、5日の滞在ならば笑って済まされるが、1週間以上の中期滞在者には根本的な対策が必要であろう。
余談であるが、8年ぶりに訪れたワイキキの海辺の砂が極端に減ったことに気づいた。温暖化で海面が上がったことも1つの理由である。潮の流れの変化で砂浜が抉られ、侵食されたのであろう。その対策として、海砂の補強がされているそうだ。その砂は、遠くオーストラリアから運搬されているので、『ワイキキの砂はオーストラリア産』と呼ばれているらしい。ワイキキの海辺の価値を保つための陰での努力は、涙ぐましいな――。
それでもハワイに惹かれる
ライオンズ国際大会の影響が終了したとみられる3日以降も、ワイキキの浜の人出には変化がなかった。帰る人もいれば、また新しく来訪する人も続出している。毎朝毎朝、往来を眺めると、「またまた新規観光客がやって来たな」と溜息をつくくらいに多い。6月末はまだシーズンオフにあたるのだが、混雑の人込みには感服する。7月以降のサマーバケーションが本格化すれば、一体どういう光景になるであろうか――。
2013年の統計によると、ハワイへの来訪者は784万人になる。アメリカ本土からは489万人、日本からは2番目に多い145万人、続いてカナダからの50万人となる。意外にも中国、台湾、韓国からの訪問者は少ない。中国の場合は、東南アジア、とくにマレーシア、インドネシア・バリ島に関心があるようだ。08年のリーマン・ショック以前には、日本から年間200万人が押しかけていた。そのピークにはおよばないが、年間140万人で推移している。
ただ、日本人が重宝がられているのは、今も昔も変わらない。中国の“爆買”まではいかないのだが、日本人の購買力が際立っているからだ。アメリカ本土からの来訪者は1日当たり144ドルの金を使うというが、日本人のそれは289ドルと倍になるデータがある。たしかにハワイの商売人は、この日本人の購買力には敬服の念を示すのは当然の成り行きであろう。
筆者もこの3年間、海南島、セブ島、インドネシア、マレーシア、ラオスと、リゾート地を行脚した。しかし、行きつくところ、ハワイを凌ぐところはない。リゾートとしてのインフラが最も充実していることも理由であるが、何よりも、安心するのである。(了)
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