165億円で引き抜いたソフトバンクのアローラ副社長の役員報酬は?(前)
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経営者の移籍金は、米大リーグや欧州プロサッカーの水準となった。ソフトバンクが昨年9月に米グーグルからスカウトしたニケシュ・アローラ氏(47)に対し、2015年3月期に165億円余りの報酬を支払っていた。国内上場企業が経営幹部に支払った報酬としては過去最高だ。
グーグル時代のアローラ氏の報酬は60億円
ソフトバンク(現ソフトバンクグループ)が6月19日、東京都内で開いた株主総会で、米子会社の最高経営責任者(CEO)、ニケシュ・アローラ氏が代表取締役副社長に選任された。
総会後に公表した有価証券報告書によると、アローラ氏に総額165億5,600万円の報酬を支払っていた。内訳は契約金などの短期報酬が145億6,100万円、株式報酬19億9,500万円。孫正義社長が「後継者候補の筆頭」と表明しているアローラ氏を破格な巨額報酬で迎え入れた。総会で165億円の移籍金が公表されていれば、株主がいかに反応し、孫社長がどう説明したか。本人の口から聞いてみたかった。孫社長がアローラ氏に移籍金をいくら支払ったのか。株式市場で関心を集めていた。アローラ氏はグーグルのCBO(最高事業責任者)時代の報酬が60億円に上る。その金額をはるかに上回る報酬を示さなければ、移籍に応じることはないと見られていたからだ。
アローラ氏にぞっこん惚れた孫社長
アローラ氏はインド出身。ドイツテレコムの携帯電話子会社Tモバイルの欧州部門幹部などを経て04年グーグルに移った。同社の幹部時代に孫社長と出会った。
孫社長は株主総会で、アローラ氏を後継者候補に指名した理由をこう語っている。ヤフー・ジャパンは米ヤフーの検索エンジンを使っていたが、ヤフーがマイクロソフトに検索事業を売却した。その後、ヤフー・ジャパンはグーグルの検索エンジンに切り替えた。その時の交渉相手がニケシュ・アローラ氏だった。「交渉は、相手の人柄や頭の良さがより見えるもの。お互いに利害関係をもって真剣勝負をして、これは“ただ者”ではないと心から思った。ビル・ゲイツ(マイクロソフト)、スティーブ・ジョブス(アップル)、ジャック・マー(アリババグループ)と同格レベルのすごさを感じたのがニケシュだった。彼の人格と洞察力と、ネットの情報革命に対する情熱など、複合的に感銘を受けて惚れ込んだ。そこで口説き落としたということだ」
(『株主総会2015』東洋経済オンライン6月20日付)
アローラ氏にぞっこん惚れ込んだ孫社長は、カネに糸目をつけずグーグルから引き抜いたというわけだ。
国内企業ではオリックスの宮内義彦氏の54億円の役員報酬が最高
それにしても、移籍金165億円とは破格。プロ球団楽天の田中将大投手がニューヨークヤンキースに移籍したときの契約金が、7年契約で161億円である。経営者の移籍金も大リーグ並みだ。ソフトバンクはアローラ氏と何年契約を結んだのだろうか。
フォーブスの調べでは、米主要企業の経営者で13年に報酬が最も多かったオラクルのラリー・エリソン最高経営責任者(当時)ですら約96億円だった。国内では、オリックスが、昨年6月までに経営トップを33年あまり務めた宮内義彦シニア・チェアマンに支払った報酬が最高。15年3月期の報酬額は、役員退職慰労金にあたる功労金(44億6,900万円)を含め54億7,000万円だった。外国人経営者の最高報酬額として例年話題を呼ぶ日産自動車のカルロス・ゴーン会長兼社長は10億3,500万円(15年3月期)と初めて10億円の大台に乗せた。武田薬品工業の初の外国人社長であるクリストフ・ウェバー氏の15年3月期の役員報酬は5億700万円。株主総会直前に辞任して物議を醸したフランソワ・ロジェ最高財務責任者(CFO)のそれは3億400万円。スイスの食品大手ネスレの次期CFOに引き抜かれた。
ウェバー社長は「企業のグローバル化を図る中でヘッドハンティングは避けられないが、(就任から)2年で辞任は短すぎる」と不快感を示した。武田薬品はロジェ氏と何年契約を結んでいたのか。ネスレから好条件を提示されたのだろう。
鳴り物入りで日本企業に招かれたこうした外国人経営者の報酬も、アローラ氏の巨額報酬の前には小さく見える。(つづく)
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