ワタミ、メッセージ~老人ホームビジネスが大混迷(前)
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老人ホームビジネスは大混迷だ。居酒屋チェーン「和民」などを経営するワタミ(株)(東証1部上場)は老人ホームの介護事業を売却。老人ホームを運営する(株)メッセージ(岡山市、JQ上場)では職員による入所者の虐待が次から次と出てきた。その一方で、損保ジャパン日本興亜ホールディングスはワタミの介護事業を買収、メッセージに出資した。介護ビジネスに何が起きているのか?
ワタミが“虎の子”の介護事業を売却するワケ
身売り話が公然とささやかれる居酒屋大手のワタミ(株)が、まず手掛けたのは介護事業の売却だった。損保ジャパン日本興亜ホールディングス(株)に200億円程度で売却する。売却対象は、「レストヴィラ」という名称の有料老人ホームを運営する子会社ワタミの介護。首都圏を中心に110施設を展開。
ワタミは居酒屋事業の不振により2015年3月期の連結売上高は1,553億円、連結最終損益は126億円と、2期連続の赤字を計上(前期は49億円の赤字)。16年4~6月期も赤字を解消できず自己資本比率は6.2%まで落ち込んだ。
このままでは融資を引き揚げあげられてしまう。主力行の横浜銀行などの金融機関との間に条件に抵触すれば融資を引き揚げられる「財務制限条項」が設定されているからだ。1つは「純資産額が12年3月期末(293億円)の75%以上を維持」という条件。赤字が続けば、この条件に抵触する。今年7月「純資産額が15年3月期末の100%維持」に変更。
2つは「経常損益が2期連続で赤字にならない」という条項。前期は34億円の経常赤字、今期は黒字転換が絶対条件となった。そこで浮上したのが、介護事業の売却だ。ワタミの介護の売却益で黒字に転換することにしたわけだ。
ワタミの主力3事業、居酒屋事業、家庭に弁当を配達する宅食事業、有料老人ホームの介護事業のなかで、比較的健闘していたのが介護事業。居酒屋の赤字を補填してきた。15年3月期の介護事業の売上は354億円、営業利益は24億円の黒字だった。
背に腹を代えられなかったとはいえ、“虎の子”である介護事業の売却は、ワタミの再建の芽を摘むことになりかねない。
それにしても、介護大手の同業者は、なぜ、ワタミの介護の買収に手を挙げなかったのか。大きな理由は、有料老人ホーム事業の将来性を不安視しているからだろう。有料老人ホームには参入企業が相次ぎ、低価格競争が激化。採算確保が厳しくなった。老人ホーム「アミーユ」で次々起こる転落死
有料老人ホームは粗製濫造によるサービスの低下が懸念されていたが、それが現実となった。低料金の介護付き有料老人ホーム「アミーユ」で業績を伸ばしてきたジャスダック上場のメッセージ(岡山市)で、信じ難い事故が続出した。
同社が経営する介護付有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」(神奈川県川崎市)で、昨年11月から12月にかけて3人の入居者が相次いで個室のベランダから転落死した。事故が起きたすべての日に夜勤をしていた23歳の男子職員は、今年5月に施設内での窃盗で逮捕された。窃盗は計19件、被害総額は200万円以上に及んだ。
同施設では、今年3月に浴槽内で83歳の男性が頭まで湯に浸かり死亡したことが、6月には職員4人による85歳の女性への日常的な虐待が発覚した。
さらに9月中旬には、「アミーユ豊中穂積」(大阪府豊中市)が、豊中市から6カ月の新規受け入れ停止の行政処分を受けた。行政処分は同施設で男性職員が70代の入居者に対して身体的虐待を行ったことが原因だ。
虐待は全国の他の「アミーユ」でも起こっていた。過去2年間で、全国の「アミーユ」施設で、5人が不可解な事故により死亡、疑いのある事案も含めて少なくとも9件の虐待が明るみになった。事態を重く見た厚生労働省は9月29日、メッセージの岡山市の本社の立ち入り調査に入った。(つづく)
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