2024年11月21日( 木 )

王将社長射殺事件と福岡センチュリーゴルフクラブの接点

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 「福岡地検が(1月)20日、ゴルフ場運営会社福岡センチュリーゴルフクラブ(福岡市中央区)の元社長の福岡県朝倉市にある関係先を電磁的公正証書原本不実記録・同供用容疑で家宅捜索した」――1月20日の新聞各社の夕刊が一斉に報じた。

 元社長は昨年4月、福岡センチュリーゴルフクラブの株2万株を増資したとする虚偽の臨時株主総会議事録を法務局に提出し、登記変更をした疑いである。同社株主の北九州市のホテル運営会社が、昨年6月に元社長を刑事告発していた。
 虚偽登記などたいした容疑ではない。そんな事件に、なぜ検察が乗り出すのか――。

 産経新聞電子版(1月20日付)は、「王将社長射殺事件と接点か」という見出しをつけて、検察が家宅捜索した狙いを報じた。

 「この会社(福岡センチュリーゴルフクラブ)が入るビルは一時、平成25年12月に京都市山科区で射殺された「王将フードサービス」前社長大東隆行さん=当時(72)=が社長を務めた王将関連会社が所有していた。捜査当局は王将側と男性の間に接点があるとみて、王将や大東さんをめぐるトラブルの情報収集の一環で男性にも話を聴いている」。

 検察は福岡センチュリーゴルフクラブを突破口に、王将社長の射殺事件の解明に乗り出したという記事である。

王将と部落解放同盟元幹部との関係

pistool 「餃子の王将」を展開する王将フードサービスの社長だった大東隆行氏は、2013年12月19日午前5時45分頃出勤し、駐車場で車を降りた直後に腹や胸などを拳銃で撃たれて死亡した。
 ――それから2年。捜査は難航。迷宮入りかと見られたが、事件は新たな動きを見せた。15年12月13日の新聞各紙は、「現場近くから遺留品が見つかり、検出されたDNA型が九州に拠点を置く暴力団組員の男と一致した」と報じた。

 写真週刊誌『FRIDAY』デジタル版(15年12月18日付)は、DNA型が一致した暴力団幹部は「『特定危険指定暴力団』に指定されている、福岡・北九州市に本部を持つ工藤会」だという京都府警捜査幹部の話を伝えている。
 京都に本拠地を置く王将の社長を撃ったのが、なぜ九州の暴力団関係者なのか。各マスコミが注目しているのが、王将と九州のゴルフ場をめぐるトラブル、そして部落解放同盟元幹部との関係だ。

 王将の創業家である加藤家をめぐる裏情報は、15年6月に発売された一ノ宮美成+グループ・K21の著書『京都の裏社会 山口組と王将社長射殺事件の聖域』(宝島社)に詳しい。王将について、不動産ブローカのこんな証言を掲載している。

 「『王将』のバックは、なんといっても上杉佐一郎さんでしたよ。

(略)

『王将』の餃子の店の全国展開に乗り出す際、数百億円ともいわれる原資をメガバンクから上杉さんが引っ張ってきたそうです」

 「上杉さん」とは、“解同のドン”と言われた故・上杉佐一郎元部落解放同盟中央執行委員長。暴力団でも恐れた人物だ。上杉氏と王将の創業者、故・加藤朝雄氏は福岡県出身の同郷だった。そのため、加藤一族と上杉氏の関係が築かれていった。
 その関係は、王将創業者の長男、加藤潔氏と佐一郎氏の異母弟の上杉昌也氏に引き継がれた。上杉昌也氏は、福岡センチュリーゴルフクラブの経営者だ。ゴルフ場が資金難に陥ったため、加藤潔氏は王将の子会社であるキングランドを迂回して福岡センチュリーゴルフクラブに融資した。

 しかし、バブルが崩壊し、返済は焦げ付いた。王将フードサービスは子会社に貸し付けた104億円が回収できず、赤字に転落。加藤潔氏は2000年、責任を取って辞任した。
 代わって王将フードサービスの社長となったのが、大東隆行だ。実直な人柄で知られる大東氏は、王将を取り巻く裏社会と手を切ろうとしてトラブルに巻き込まれた可能性は低くない、と前出の『京都の裏社会』は推測している。

福岡センチュリーゴルフクラブ代表の上杉昌也氏は元地上げ屋

 ゴルフ場運営会社の(株)福岡センチュリーゴルフクラブは、1987年5月に設立された。上杉佐一郎氏が福岡県小郡市出身という関係もあって、その隣の甘木市(現・朝倉市)にオープンしたという説がある。佐一郎氏の事績を顕彰するため、故郷に錦を飾ったのかもしれない。女子プロツアー会場になるなど、知名度があった。だが、会員預託金返済に行き詰まり、11年6月、福岡地裁に民事再生法の適用を申請した。負債額は関連会社を含めると428億円に上った。16年1月7日に手続きを終結している。
 福岡センチュリーゴルフクラブの倒産の舞台裏を、本サイトNetIBは追及してきた。
 筆者はコダマの核心レポートとして、『偉大な兄に泥を塗った、福岡センチュリーゴルフクラブ・上杉代表』のタイトルで掲載した(11年6月29日付と6月30日付)。福岡センチュリーゴルフクラブと上杉昌也氏について詳しく書いているので、併せて一読をお勧めする。

 上杉昌也氏は84年2月、京都市で(株)京都通信機建設工業を設立した。バブル時代に地上げビジネスで成功。その勢いで福岡市に進出し、中央区赤坂にビルを取得した。そして90年5月、ゴルフ場、福岡センチュリーゴルフクラブをオープンした。その直後にバブルが弾けた。
 親会社の京都通信機建設工業の業績は悪化。06年12月31日の株主総会で解散を決議した。親がコケて、子の福岡センチュリーゴルフクラブも倒産に追いやられたのだ。

王将社長社事件は解明されるのか

 資金難に陥った福岡センチュリーゴルフクラブに資金支援したのが、王将創業者の加藤一族だったわけだ。京都通信機建設工業は、中央区赤坂に所有していたビルを売却。購入したのは王将の関連会社である。

 冒頭の新聞報道を、具体的な名前に置き換えるとわかりやすい。福岡地検が家宅捜索した「元社長」とは上杉昌也氏。ゴルフ場運営会社、福岡センチュリーゴルフクラブが入居している中央区赤坂のビルとは、京都通信機建設工業が王将に売却し、王将の関連会社が一時所有していた物件だ。福岡センチュリーゴルフクラブと王将は、ズブズブの関係にあったことがわかる。

 それでは、福岡センチュリーゴルフクラブを突破口に、王将社長射殺事件を解明することができるだろうか――。ハードルは、高いと言わざるを得ない。
 そもそも大東氏がなぜ、暴力団に射殺されたかがわからない。襲われた動機も、ヒットマンに指示した者の有無さえわからない。王将社長射殺事件の全容が解明されるまでには、まだ時間がかかりそうである。

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