NHKの籾井会長が社外取締役を務めたグローバルアジアホールディングスの事件史(後)
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「マチ金の帝王」から東京相和銀行のドンにオーナーが交代
グローバルアジアホールディングス(株)(以下、グローバル社)は、1947年に設立された豊国糸業(株)(52年から豊国産業)を前身とする企業。ミシン糸や製袋用撚糸をつくり、63年に店頭登録(現ジャスダック市場)を果たした。だが、仕手筋に狙われて株主が交代。漂流を続けることになる。
96年に「マチ金の帝王」と呼ばれた金融会社、(株)アイチのオーナー森下安道氏のファミリー企業が筆頭株主になり、商工ローン会社に看板を書き換えた。バブルの時代、アイチは仕手グループの最大の金主だった。1兆円の貸付資産があり、取り立ての厳しさから「マムシ」と恐れられた。
「帝王」の盟友が、(株)東京相和銀行のドン長田庄一会長である。マチ金と呼ばれる手形割引業者やサラ金の消費者金融業者の最大の資金スポンサー。全国の金融業者の総元締だった。「高級金貸しにすぎない銀行が、経済界で大きな顔をしていること自体、そもそも間違い」。こういってはばからなかった長田会長は、全国の銀行トップのなかでも異色な存在。大蔵省(現・財務省)や日本銀行からの天下りで、東京大学出の頭取が主流の地銀で、学歴もなく日掛け金融からのし上がった経歴からして、銀行家らしくなかった。
長田会長のもとには、政治家や高利貸、暴力団、総会屋など、一癖も二癖もある連中が次々と訪れた。会長室はアングラ紳士の社交場と化した。
99年に東京相和が破綻処理されたとき、長田会長は金融監督庁(現・金融庁)に「潰したら若い者が黙っていないぞ」と怒鳴り込んだ。金融監督庁の役人は真っ青。警視庁に警護を要請する電話を入れた。しかし、警視庁は「暴力団から脅かされたわけではあるまいし」と呆れ、警護の要請を断ったという。バブルが崩壊しアイチが倒産した後、旧アイチグループを支援したのは東京相和だった。東京相和が豊国産業の実質的な筆頭株主となった。だが、99年に金融監督庁によって東京相和は破綻処理。東京相和は外資系に売却され、(株)東京スター銀行になる。
魑魅魍魎が群がったアイビーダイワが234億円の巨額損失
豊国産業は2000年にアイビーダイワに商号変更。マネーゲームのカードとなった。怪しげな投資家や新規事業を立ち上げるという自称企業家などの“魑魅魍魎”が出入りし、新規事業計画、第三者割当増資、売り抜け、撤退を繰り返した。その都度、株主が変わり、経営陣は次々と交代した。
数ある「ハコ企業」のなかで、大規模なマネーゲームを行ったのがアイビーダイワだった。2006年に投資会社に大変身。巨額な資金を調達し、海外の資源開発会社を買収した。そのとき社外取締役に就いたのが、三井物産元副社長の籾井勝人氏なのである。
アイビーダイワは07年3月期に234億円もの巨額損失を計上した。アイビーダイワは赤字を垂れ流してきたが、籾井氏が社外取締役を務めた1年間だけが突出している。05年は1億6,000万円、06年は2億4,000万円、08年は35億円、09年は10億円の損失を出したが、07年は損失のケタが違う。海外資源会社に対する投資の損失処理に紛れて、暴力団へ資金が流れたのではないか――と、疑惑の目が向けられた。
その後、再び支配者が変わり、11年にプリンシバル・コーポレーション、14年にグローバルアジアホールディングスに商号を変更。お決まりの内紛が生じた。管理体制に問題があるとして15年9月、上場廃止になった。
内紛の過程で、新経営陣は旧経営陣の不適切な支出を調べるため、第三者委員会を設置。15年1月に公表された報告書は、「グローバルアジアにおいては、過去に反社会的勢力との関係が疑わしいか、社会的にその属性に問題がある人物の関与が認められた」と踏み込んだ。グローバル社の元社長が逮捕された。暴力団の資金源の解明につながるのか。今後の捜査の焦点だ。
(了)
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