2024年11月05日( 火 )

神の怒り、自然の破壊力に~慢心人間無力(4)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

18日から流れが変わった

 「いやー、大変でした。15日から17日にかけて、6名の作業員たちを熊本の震災現場へ支援のために派遣したのです。大変だったのは、飯から水まで自前調達を余儀なくされたことでした。我々、現地入りした連中が食料確保に必死になり、苦労したのです。現地で生活している被害者の家族の皆さんたちの生活環境は劣悪でしょう。生きていくための最低物資や、安心して寝泊りできる場所の確保の方策がないか、不安でしょうね。できるだけの物資の援助はさせていただきます」と語る、土木会社のA社長。

地震被害の様子(15日撮影)<

地震被害の様子(15日撮影)

 この支援派遣の背景には、15日に九州地方整備局の役人から催促があった。「人を送り込む御苦労は理解しています。この対価補償は、必ず出てくるはずですよ」と下話があったとか。
 主旨を要約すると、(1)5,000億円の災害復興特別予算がつく、(2)2兆円の建設・土木が創出される――というものである。だが、この2兆円の数字には、桁違いの法螺の感じがしないでもない。例として、被害を受けた10万世帯の家族が、1世帯当たり平均200万円の被害修復の金を捻出しても、10万×200万円=2,000億円にしかならないのだ。10倍の開きがある。
 しかし、前回紹介した赤橋崩落、その要因となった立野周辺の57号線沿い1kmの土砂崩れが激烈だ。「あの修復予算でも500億円はかかるであろう」と自己査定をしてみると、2兆円という数字もまんざら虚構ではない。A社長も、復興工事受注を見込んで支援部隊を送り込んだ邪心があったとしても、責められるものではない。

 18日から流れがチェンジした。『復興ビジネス、復興ビジネス』と騒ぎ出したのである。

 電気業者オーナーの葬儀が行われた。次の社長には社内から抜擢した。株をめぐる故人一族とのトラブルも予想される。取引電材屋のB社長に、先行き動向を尋ねた。「いやー新社長は自信満々だ。熊本復興工事が回り始めると、仕事が急増すると豪語している」と裏話を教えてくれた。
 このB社長への取材の過程で、驚くべきことを耳にした。行政側は、復興工事が本格化すると、とてもじゃないが熊本県全体の施工能力では、仕事がさばけないと見切っている。だから電気工事業界では、『九電工さん!!締めてください』と相談に行ったとか。
 真実かどうか判明しない。だが、ありそうな話である。『神が怒り、自然(地震)の破壊力には慢心人間無力』が証明されて、15日から17日までの間は、人間たちは恐ろしさのあまり喪に服してきた。そして18日からは、慢心人間たちはビジネス欲得に奔走し出したのだ。
 ちなみに、2013度の熊本県内総生産は6兆36億円、県民所得は4兆3628億円である。仮に熊本地震復興需要が2兆円ならば、莫大な経済効果を生み出すであろう。

便乗儲けを許すな!!

 今回の熊本地震の復興事業で、破格の恩恵を受けるのはどの業種か!!
 それは、生コン業界である。生コン工業組合の熊本地域は、かつては九州一の結束を誇って、高単価の生コンをゼネコンに押しつけていた。ところが、どうしたことであろう。内部統制が破綻して、安売り合戦に終始するようになっていた。この業界トップのC氏が、小躍りして嬉しそうに語るのだ。この笑みは5年ぶりに見た。「いやーコダマさん!!今年いっぱい安売り競争を続けていたならば、業界は共倒れになっていた。今回の震災復興は我々を救ってくれる」と。

 C氏を代表する業界の名誉のために、被災者への応援活動を紹介する。生コン業界は決して銭ゲバ集団ではない。ただし、震災被害者の犠牲の上に立って(結果として)儲ける機会を捨てるような軟な集団ではないことは、承知のことである。業界が保有する生コンミキサー車は、15日よりフル稼働している。病院、老人福祉施設などへの水供給のためにピストン輸送して、重宝がられているのだ(飲み水ではなく下水用)。社会貢献はやっているのである。

 このC氏が、被害状況を説明する。(1)表に出ない被害実像は、想像を絶するほどある。(2)まだ語られていない地区の被害は甚大である。(3)加えること、熊本市中心部の商業施設、オフィスビルは、表面ではわからない内部の破壊は致命的である。仰々しくではなく事実を明白に言うと『大半のオフィスビルは解体・新築を余儀なくされている』そうだ。「この修復額がトップになる」と読んでいる。さー生コン業界の出番だ、となる。

 C氏は「次は南海トラフ」と叫んだが、予想される規模の被害が出たら、復興できずに日本は沈没するのではないか!!国民も現実から目をそらすわけにはいかない。台風、集中豪雨、地震津波の極度の被害に遭遇する覚悟が必要なのである。避けるためには、強靭な国土建設の金が求められる。また建設関連業界は、災害バブルによってしか成立しない存在になり下がった。次に神は、どの程度の怒りを示されるのであろうか!!

 
(3)
(5)

関連記事