傑物・堀江貴文(ホリエモン)氏の歴史的評価の再考(1)
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パナマ文書には関係ない
「パナマ文書」には様々な財産隠しの面々の名前が暴きだされている。福岡県内でも8件(企業、個人)が発覚しており、日本全体では楽天・三木谷浩史氏の名前などが注目されているのである。その中ではっきりと断定できるのは堀江貴文氏には全く資産隠しの小細工には関係ないということだ。つまり「パナマ文書」から名前が漏れてこないということだ。詳細はあとで触れる。
ライブドア・堀江貴文氏を「良い」「悪い」と論評して、たらふく飯を食ってきた記者やジャーナリストが、腐るほどいる。同氏がホリエモンとしてオリックス・ブルーウェーブの買収に走ったり、フジテレビの最大の持株会社ニッポン放送の35%の株を買収したり、果ては国政選挙に立候補したりしたのは、まだ32~33歳の青年経営者のときであった。この凄まじい突進力を妬んで、稚劣な記者たちは叩きに叩きまくった。まさしく出る杭を打つという日本特有の体質だ。今回の傑物・ホリエモンの企画において、同氏はどう生きていくのかを多面的に分析してみた。
堀江貴文の極めるビジネス人生を冷静に評価する
堀江氏は実刑も食らい、牢屋暮らしも完了した現在、華々しく活躍している。この事実をどう見るのか。32歳当時の堀江貴文が何を目指そうとしているのかを、冷静に分析する記者はいなかったのか。堀江氏自身も、時代の申し子である。『歴史的考察の1つでも発表してみろ』と問いただしたい。堀江氏が支配しようとしていたフジテレビは、民放TVではどん尻の経営状態になっている。こうなる前に、手切れ金1,400億円を得たことは正解であった。
日本国家の最隆盛の手前で誕生したホリエモン
筆者はかねてより、『日本国家の繁栄のピークは1975年~92年の17年間であった』と指摘してきた。その理由は、(1)誰もが努力すれば報われていた、(2)過度の格差が目立たなかった(総中間層意識)、(3)地方も活気があり、地方に住もうかなという気にもなった、ということだ。わかりやすい例を紹介しよう。筆者が最初に住宅(建売)を購入したのは、76年8月である。隣近所の旦那の職種は、トラック運転手(長距離ではない)、住宅の大工、地元の中小企業サラリーマンたちであった。そこも専業主婦で、気分的な余裕を持っていたと記憶する。
当時、田舎の宮崎県に帰り、同窓生などの自宅を訪ねると、結構な家を新築していた。全国津々浦々で、都会では建てられない豪邸を一市民たちが平然と建てていたのである。田舎の同期では教職に就いた者が幅を利かせていた。大体、教職員志望者たちは、筆者の田舎の進学クラスでは二流の下であった。教職員の待遇が、破格の時期であった。一般公務員よりも、俸給30%高い水準を保証されていた。同期の教職員OBたちは、贅沢な老後生活を過ごしている。夫婦で教職員であれば、なおさらである。田舎に残ったなかでの勝ち組になったのだ。
堀江氏でもそうであるが、田中角栄氏が今まさしく再評価されている。老人ボケした石原慎太郎氏は、宿敵・ライバルであった角さんを題材にして、印税を稼いでいるのだ。この角さんが、政治生命を賭けて日本列島改造を目指したのだが、75年~92年の17年間の期間が、その再現であろう。日本の最隆盛の一歩手前の時期、72年10月29日に堀江貴文氏は生を受けたのである。翌73年には、オイルショックが到来した。
国家が溶けて経済システムが壊れる
日本国家の人口減は、憂々しきことである。さまざまな理屈はあるが、人間という生物が、『種の保存』の本能を忘れてしまったのだ。加えること、プレッシャーに脆くなったことである。たとえばビジネスにおいて、多少の仕事量を増やすとギブアップする。勝手に心身症へ逃げ込むのである(病気ではない)。この類(プレッシャーに弱い)の潜在的な比率は、40%におよぶであろう。企業側は、この心身症逃避予備軍を抱えていても、企業防衛のために必死で策を講じる。
問題なのは、日本国家の対策なのだ。老人寿命の延命医療費用、年金捻出、子ども育成予算増強、軟弱な若者への生活資金援助の強化、と目白押しなのである。国家は国民の基本的、最低限度の生活を保証する使命があることは承知している。しかし、この莫大な資金を、どこから集められるのか!!
若者たちは軟弱で、未来を背負うことに関してはおぼつかない。人口は急減する。次に述べるが、日本の超優良企業であった老舗の存在が危うくなってきた。堀江氏は、これら日本の惨状をしっかりと観察しているはずである。
日本国家は溶ける。そして経済システムが壊れていく。世界を見渡しても、過去の経済学、社会学の概念では理解不能になっている。「預金金利を生まない、投資リターンが皆無という現状は果たして資本主義と呼べるのか」という崇高な命題なのである(イスラム教の世界では、金利ゼロは常識であるが―)。株投資のアナリストでさえ指摘している「資本主義が終焉して新しい体制へ移行し始めた現時点」を、学者ですら「何経済主義」と断定できていない。
日本が資本主義という認識は前提となってきたが、「社会保証を続けて1,000兆円の財政赤字を抱くとなると、新しい体制に移行した」と説く一部の識者たちが出現し出した。
このように将来が不透明な時代に、日本国家を支えてきたトップ企業の動向が危うい。(1)「国家を支えるのは我がグループの使命」と公言してきた三菱グループ(三菱財閥)がおかしい。トップの三菱商事の赤字は、エネルギー・資源価格の暴落によるものという一過性のものかもしれない。ただし、三菱重工・長崎造船所における建造中のクルーズ船の火災事故のたび重なる発生などを目撃するにつけても、「日本のものづくりの伝統は、どこに消えたのか?」と叫びたい。三菱自動車の燃費走行記録の改ざん行為こそは、罪である。詐欺行為そのものなのだ。
(2)東芝ホールディングスの粉飾決算の画策には、開いた口が塞がらなかった。このグループは、財閥である三菱と比較しての存在感は多少劣るが、技術製造業としては東電などの9電力会社とともに、日本の経済界を領導してきたことは、自他ともに認められている。しかし東芝グループの行く末を強く懸念したのは、11年3月の東日本大震災発生の2年前から、原発事業を中核企業として、海外の同業者を買収しまくり、自信満々で自己陶酔していたときである。この懸念は予想通りに、現実のものとなった。もうグループが解体されても驚かない。堀江氏の刑と比較すれば、東芝の粉飾画策責任者には10年の実刑がふさわしいと思えるほど、罪は重い。シャープに関して言えば、台湾や中国企業に買収されても、いかんともしがたい。心底、愛想を尽かしてしまった。では、過去の重鎮企業群が墓穴を掘って自爆する状況のなかで、新興勢力が台頭してその穴を埋めているのか―。現実は、脆く儚い。
まずトップに挙げられるのは、ソフトバンク・孫正義氏だ。孫氏が80年に会社を起こして、大風呂敷を広げて企業を拡大させてきた実績は周知の通りである。あとは、ユニクロを展開しているファーストリテイリング・柳井正氏、楽天・三木谷浩史氏、ハウステンボスを再建させた澤田秀雄氏らの名前が挙がる。だが、溶けつつある日本経済のシステムを補強する難事業を担う人材は、あまりにも稀有である。先行き不安だ。
では、先輩たちと比べて一世代以上若い堀江貴文氏に託すことが、はたして可能なのか?(つづく)
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