ソフトバンク、孫社長がアローラ副社長を切った本当の理由(後)
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アローラ氏は利益相反を疑われる
それでは、アローラ氏は何が問題になったのか。投資家グループが最も問題にしたのは、アローラ氏がグーグル在籍時の2007年からプライベート・エクイティ(未公開株)投資会社「シルバーレイク」のシニアアドバイザーを務めているということだ。
ブルームバーグによれば、「アローラ氏はソフトバンクのために行なうハイテク企業投資と同様の取引をシルバーレイクが行なうことを支援することで報酬を受けている。こうした二重の役割はソフトバンクの利益を損なう形でシルバーレイクを利する恐れがある」と書簡が指摘したと報じた。
シルバーレイクは日本では馴染みはないが、同社が手掛けた案件をみれば、凄腕の投資会社だということがわかる。米コンピュータ大手デルのMBO(経営陣が参加する買収)は、シルバーレイクには画期的な業績だった。
デルの創業者のマイケル・デル最高経営責任者(CEO)は13年9月、投資ファンドと組んで2兆4,700億円でMBOを実施、デルの全株式を買収し非公開とした。タブレット端末の普及で主力のパソコンの需要が伸び悩むなか、投資家の意向を気にせず、大胆な改革を進めるためだ。金融危機以降、最大規模の非公開化を仕切ったのがシルバーレイクだ。
デルは15年10月、米ストレージ(外部記憶装置)大手のEMCグループを8兆円で買収することで合意した。IT業界で過去最大の買収。法人を対象としたITインフラ市場でIBMとヒューレット・パッカード(HP)と肩を並べる勢力が誕生する。デルが組んだのがシルバーレイクだった。
デルは巨額に膨れる買収資金を調達するためにITサービス部門を売却する。(株)NTTデータは今年5月、デルのIT部門を3300億円で買収することに合意した。
IT業界のM&A(合併・買収)で中心的役割を果たしているのがシルバーレイク。シルバーレイクのシニアアドバイザー、つまり投資指南役を務めているのがアローラ氏だ。利益相反という、深刻な問題を抱えているのだ。
高くついたアローラ氏のスカウト
ブルームバークの取材に、アローラ氏は「シルバーレイクから得ている情報は、具体的な投資案件候補について知る必要があるものに限られている。昨年1年間でシルバーレイクとの契約による職務に費やした時間は10~20時間程度」と釈明している。
投資の世界に身を置いているアローラ氏が、利益相反を疑われることを認識していなかったはずはない。ソフトバンクに移るとき、シルバーレイクのアドバイザーを降りていなければならなかった。高額報酬でスカウトした孫社長とソフトバンクは舐められたものだ。
アローラ氏は15年3月期に、契約に伴う一時金も含めて165億5600万円の報酬を受け取った。16年3月期の報酬額は80億円だった。アローラ氏の報酬額は、米アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)と同水準だ。
書簡は、アローラ氏のソフトバンク入社による恩恵がまだ何も見られない中で、15年3月期に高額の報酬が支払われたことは、「憂慮すべきであり、容認できない」と述べているという。
孫社長は、投資家グループから解任要求を突きつけられたアローラ氏に引導を渡した。常識外れの高給でスカウトしたアローラ氏は高い買い物についた。孫正義社長による人材投資の最大のミスだった。
(了)
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