孫氏とアローラ氏の訣別を決定的にした日本ヤフーの売却問題(後)
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アローラ氏は日本ヤフーが大嫌いだった
ソフトバンクグループが中国のインターネット通販最大手のアリババ集団の株式の一部を1兆円で売却したとき、メディアが注目したのは米ヤフーが持つ日本ヤフー株の行方だった。日本ヤフー株はソフトバンクグループが43%、米ヤフーが35%を保有している。
経営が悪化している米ヤフーは中核のネット事業や日本のヤフー株の売却を検討中で、2次入札の締め切りが6月6日に迫っていた。「アリババ集団株の売却で得た資金で、日本ヤフー株を買い取る」という観測が支配的だった。必要な金額といい、資金調達の時期といい、日本ヤフー株買収の準備に入ったと見るのも無理はなかった。
だが、ソフトバンクウォッチャーの間では、そんな報道に首を傾げる向きが少なくなかった。アローラ氏が日本ヤフーを嫌っていたことは、周知の事実だったからだ。2015年6月に孫氏に代わって日本ヤフーの会長に就いたアローラ氏から漏れてくるのは、日本ヤフーをコケにするものばかりだった。
アローラ氏の元職であるグーグルは、検索エンジンで米ヤフーを打ち負かした。米ヤフーの経営が悪化した主因だ。日本ヤフーはパソコンの検索エンジンでは首位だが、スマートフォン(スマホ)では、グーグルがトップだ。スマホ時代に、日本ヤフーはグーグルに突き放された。アローラ氏は、日本ヤフーに将来性はないと見なしていた。
日本ヤフーを「子供の遊び場だ」と酷評
アローラ氏が去った後、ヤフーニュース(6月21日付)は個人ブロガーの山本一郎氏の寄稿文を載せた。山本氏は、アローラ氏がソフトバンクの投資手法について批判的な言動が目立っていたと書いた。
〈ヤフージャパンについては、「ドメスティックスで儲かっている事業だとしても、ICT産業として世界で見渡したときに秀でているものは何もない」「子供の砂場に等しい若い経営者が、将来性も考えずに好き勝手にやっているだけで、まったく魅力を感じない」として強い批判を繰り返し、一時期はヤフージャパンの経営者については現社長の宮坂学さん以外は全員異動させることも検討していると伝えられていました〉
アローラ氏が日本ヤフーを「子供の遊び場」とこき下ろして、「こんなものは世界に通用しない」と言い放っていたことは、ソフトバンクウォッチャーたちは誰もが知っていた。
「子供の遊び場」のために、アローラ氏が米ヤフーから日本ヤフー株を買い取るとは、およそ考えられないことだ。それどころか、日本ヤフーを売却しようした。これで、孫正義の堪忍袋の緒が切れた。日本ヤフーの売却を主張し、孫氏が激怒
インターネットという新しい時代に、孫氏が米国で探し当てたお宝が、1995年に創業したばかりで社員6名のネット検索会社、米国ヤフーだった。米国ヤフーに出資した。米国ヤフーが実現するであろうインターネットビジネスの輝かしい未来を孫氏は信じ、青田買いをした。
この投資で、孫氏は金鉱を掘り当てた。米国ヤフーの成功がソフトバンクのスプリングボード(飛躍板)となった。米ヤフーと共同出資で、ヤフーの日本法人、ヤフー(ジャパン)を設立。米国ヤフーに115億円追加出資して筆頭株主となった。孫氏がビジネスで成功した原点は、日本ヤフーにある。それなのにアローラ氏が「ヤフーは米国では全然だめだ。日本でのビジネスには将来性はない」と日本ヤフーの売却を主張した。これに孫氏が激怒したと言われている。
ヤフーは6月21日、株主総会を開催した。アローラ氏は欠席したものの取締役に再任され、その後の取締役会で会長が決まった。だが翌22日、ヤフー会長を辞任した。
日本ヤフーから、売却を主張していたアローラ氏は去った。だが、新たな難問が生じた。
米ヤフーは、広告やポータルサイトなど主力事業の売却を進めている。売却先は、米携帯電話2強のベライゾンコミュニケーションズ、AT&Tが有力とされている。ソフトバンクグループの米携帯電話会社スプリントのライバルだ。
「ヤフージャパンの株式は含まれていないもよう」(日本経済新聞6月28日付朝刊)との報道がある。日本ヤフー株はどこに行き着くのか。ヤフーならずとも気になるところだ。(了)
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