イギリス連合は解体4カ国に成り下るのか!!~根幹シリーズ(5)
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イギリス国民は栄光の『グレートブリテン及び北アイルランド連合王国』に酔いしれてEUを離脱したのではない。離脱の主因は、「移民者が押しかけきて職を奪う。それも低賃金で働くから迷惑だ。EUを離脱すれば移民者をストップできる」という経済問題に根ざしている。皮肉は話である。はたして底辺の嫌な仕事をイギリス人が引き受けるであろうか!!引き受けないであろう。
過去の政権の経済政策では6,500万人のイギリス国民に対して満足する仕事環境を満遍なく提供できずに終わった。加えること、金融関係者の富だけが膨張して貧富の格差を拡大させた。そのツケが回ってきた。さらに無責任なのは国民の不満につけ込んで『EU離脱』を煽り立てた政治家たちだ。彼らは、想像を絶する離脱という結果の重大さに、雲隠れしてしまった。
ロンドンが世界第2位の証券取引所の位置をキープできていたのもEUに属していたからである。たしかに富が集中したロンドンでは不動産バブルを生みだされてきた。だが一方で、成金になった金融従事者たちのおかげで金が回ってくるという恩恵を授かったはずだ。ついに、ロンドンに進出していた世界の金融・投資機関は危機感を抱いてEU圏内へ移転する準備に踏み切った。イギリスの金融大国としての地位は失われるであろう。
ヨーロッパの狭い地図を眺めながら「よくぞまあ、これだけの国が群がっているものだ」と感心する。裏を返せば、勢力拡大する国々の勃興と侵略が繰り返された歴史であった。1910年代から1945年の約30年間に2回の世界大戦が行われた。ヨーロッパエリアだけでも3,500万人が殺慄された。その苦い体験のなかから「ヨーロッパは1つ」という合言葉が唱えられ共同体としてのEUが誕生した。自由な往来が保証され、マネーはユーロで統一された。弱者国家もEUに所属すれば一級グループの特権を受けるようになった。
一時は、「理想的な共同体が実現できた」と評価されたが、2008年リーマン・ショック以来、EU国家内に景気動向の格差が生まれた。まず手始めにギリシャの離脱騒動が起きた。「ギリシャの運命をEUの役人たちに決定させる権利はない」というギリシャ人の怒りが爆発した。EUという経済共同体の限界が露呈された瞬間であった。EUが統一連合国家であれば明確な政府組織を樹立することは不可欠である。ギリシャ人と同じ理由でイギリスが離脱を決定した。さらに同じ道を選択する国も現れるであろう。そうなると世界におけるEUの存在力の低下は避けられない。
「未来の戦争を食い止め経済共同体のメリットを生かしてヨーロッパを一体化する」という崇高な理念の下にEUが結成された。月日が流れEU 各国の庶民たちの生活苦・格差が顕著になった。その不満の高まりはEU離脱という危うい状態を惹起させた。だからと言って、イギリス国民が「己の命運は俺たちで決める」という宣言したことを批判する資格はない。自分たちの生存権を高らかに宣言することは正しい。願わくば、「あらゆる情報を集め分析して理性ある判断した結果であれば」と、老婆心ながら心配するのである。
イギリス国民の1~2%の差で離脱決定がなされたに過ぎない。ロンドン住民の主流は離脱反対で占める。若者たちは「離脱反対」を叫んだ(EU内を自由に飛び回った経験を踏まえている)。成人労働者・老人は離脱の強い意思表明を行った。まさしく世代間の対立は激突の様相を呈している。だから些細な動きで離脱反対方向に流れがチェンジする可能性も残されているのだ。
さらに複雑にしているのはスコットランドの存在である。スコットランドは以前から独立論を唱えていた。この独立派はEU帰属の立場にあった。「イングランドの配下には耐えられないが、EU帰属は賛成」という理屈には遠くで住んでいる日本人には理解し難いものだ。どうであれ離脱を選択したら今度はスコットランド、ウエールズ、北アイルランドの独立の運動が強まってくることはイギリスにとって痛し痒しである。『グレートブリテン及び北アイルランド連合王国』の近代国家形成の根幹をばらすことにもなりかねない。ここにきて永遠のテーマ『民族自決』によってイギリスは4カ国に分離してしまうのか!!
(つづく)
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