2024年12月24日( 火 )

ヘルシンキ直行便の光を絶やすな!(4)~大学教育と一体化した起業の意義

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「ホテルRAZZONN」は腐るほどある

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ヘルシンキの朝

 筆者は、旅行中でも朝のウォーキングを欠かさない。3日目の19日にも、朝4時半から出かけた。朝焼けに浮かぶ街並みには、非常に情緒が漂っている。
 朝7時半から、別の表敬訪問が入っていた。人通りの少ない通りを30分ほど歩いて、どうも道に迷ってしまった感じである。少し焦った。時計は現地時間6時を回っていた。そこで、「これはまずいな」と、タクシーに乗ろうとし、『ホテルRAZZONN』のカードを提示した。ドライバーは首を捻りながら、「RAZZONNホテルOK?」と言うから、少々奇妙さを感じながら「OK」と答えた。料金は11ユーロであったが、気前良く手持ち金15ユーロ渡した。

 10分過ぎただろうか、「到着した」という。だが、ホテルの雰囲気が違う。とはいえ、玄関口には『RAZZONN』という看板がかかっているし、レストランに飛び込んだら経済同友会視察団のメンバーが朝食をとっていたので安心した。
 そこに突然、商工会議所の田中氏からの電話が飛び込んできた。「コダマさん!!どこにいるのですか?もう表敬訪問の方々は集まっています」と聞いてくるから、「今、レストランにいますよ」と返事した。すると、予想もしない反論が返ってきた。

 「コダマさん!!貴方は別のRAZZONNにいます。こちらはRAZZONNホストです。ヘルシンキには同じ名前のホテルが5件ほどあるそうです。早くタクシーで帰って来てください。時間がありません」と命ぜられた。
 自分で、顔面蒼白になったのには気づいていた。帰るにも金がない。慌てていた。ロビーには、見覚えのある添乗員の女性がいた。経済同友会の担当の女性だった。「すみません!!10ユーロ貸してください」と哀願したら、「いつ返してくれるか当てもない人に、どうして金を渡せますか!!」という剣幕であった。まことに非情な女である。
 仕方なく、「えーい、くそ!!」とタクシーに乗った。到着後、ホテルで朝食を食べていた仲間から10ユーロ借りて料金を払った。だが、朝の表敬訪問団はもう出発していたので、参加できずに終わった。まー、恥ずかしい失策である。

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『IDBMプログラム』とは

 そのチョンボした後に、ヘルシンキにあるアールト大学を訪問した。同大学は2010年に、ヘルシンキ工科大学、ヘルシンキ経済大学、ヘルシンキ美術大学の3つの大学が合併して設立されたのである。フィンランドでは1、2を争うトップ大学で、日本では東大、九大との交流があるようである。この大学の使命は、旧3大学の持ち味(=モノづくり・ビジネス・デザイン)を統合して、いかに新しいものを産み出すかというものである。
 フィンランドには、モノづくりの伝統がある(工科大学)。また、デザイン力は世界のトップを走る蓄積があることは周知のことだ(美術大学)。そして、ビジネス力も有している(経済大学)。そのバラバラの有能さだけでは、『世界では勝てない、世界では通用しない』という認識のうえに立って、『IDBM』プログラムというものが開発された。20年の歴史があり、そのたびに改革・改善されてきた。

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アールト大学での意見交流の風景

 最近では、ノキア挫折の研究が参考にされている。(1)携帯電話自体の機能は卓越したもので世界を席巻した。(2)品質だけでなくデザインにも工夫したが、アップルには負けていたのではないか。(3)持続的な勝ちをどうして得られなかったのか?(4)どうして時代転換への対応が遅れたのか?という壮大なテーマの研究から、この『IDBM』プログラムは非常な進化を遂げたそうである。フィンランド国民にとって、一時的にしろ世界を制覇したとみられたノキアは“英雄”であったのだ。

 アグロリー教授に言わせると、『IDBM』とはインターナショナルの『I』、デザインの『D』、ビジネスの『B』、マネージメントの『M』である。このプログラムを生かして、シリコンバレーで誕生している数々のグローバルスタンダードを築き上げるという、壮大な野心を燃やしているのである。2020年までのビジョンとして、技術プラスデザインに、人間の持つ情緒・エモーションを統合したプログラムを構築して、最低1つのグローバルスタンダードのビジネスモデルを確立させるということである。

 その壮大なプログラムを大学授業に具体的に落とし込み、事業化へ挑戦しようとしている。この『IDBM』プログラムを専攻しようと、1年ごとにアールト大学生が門を叩く。今期で言えば、240名が応募したが36名に絞り込んだ。男性と女性の比率は半々であり、またフィンランド人と留学生も同様の比率とした。そして、3クラス専攻に分かれるそうだ。

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 この講義を受講した学生たちには、起業するためのベンチャープログラムがある。起業家を後押しして、マッチングの場までセットしてあげるまでの環境整備が充実している。最近の例では、36名の学生のうちの20%=7名が起業家に挑戦したという。このプログラムを推進しているアグロリー教授は、「リスクを取らないとイノベーションはあり得ない」と断じつつ、「シリコンバレーに追い付き追い越す」意欲を露わにした。
 北欧とは福祉面でのモデルと見られてきたが、事業マインドも世界有数のものであることを再認識した。

(つづく)

 
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