2024年12月24日( 火 )

ヘルシンキ直行便の光を絶やすな!(5)~北欧3カ国の共通点・対比点(前)

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質実剛健の3カ国

suomi1 『北欧3カ国は社会福祉国家』というイメージが定着している。『社会福祉国家』と言えば、「何でもかんでも国家が面倒見てくれる」という錯覚・虚構がまかり通っているが、この3カ国にはそういう錯覚・先入観は通用しない。まずは「現役時代に精いっぱい働いて、納めるべき税金・公的負担金を納めてこそ、福祉保証の資格を有するのだ」という厳しい掟があるのだ。意外と、自己責任の厳しい国家なのである。裏を返せば、「我々が納めた税金がいかに活用されているか」について、厳しく追及する国民気質がある。

 彼らには、バイキングの流れが残っているのか、『自立心』が強い。「自分のことは自力で完遂させる」気質から、余計な、無駄なことはしないという生活スタイルが確立されている。食べ物においても、『人間として生きるために必要なものだけを食べればよい』という堅い信念を有しているため、『料理を楽しむ』ということには淡泊である。また、刹那的な人生観にはアレルギーを示す傾向があり、将来へ向けた蓄えには余念がない。表現を替えると、江戸時代の武士道のお手本=『質実剛健』そのものだ。

合理性の働き方が生活の豊かさを産む

 3カ国とも、女性の活用を重視している。国土の広さに比較して、男女平等、有能な人材には活躍の場を与えるのは、当然のごとき社会的な取り決め事項になっているようだ。また、1年間のうち、冬場の期間はフル活動できないという季節的な制約がある。そのため、やむなく制限された時間内での生産性を上げる労働習慣が定着している。社会福祉国家で生産性・合理化アップが掲げられ、実践されていることを耳にしたら、驚かれるであろう。この生産性が高いが故に、世界有数の高い生活水準を維持できているのである。まさしく、資本主義の求められる極限を体現している生活行動と言える。

 そして教育の重要性を知っている若者たちは、進学に注力して大学生時代には自分の専門テーマを持ってスキル習得に傾注する。必要とあらば、留学も厭わない。この教育に向き合う真剣な姿勢は、日本と経済生産性でも大きく差がつく。
 (1)日本のゆとり教育で育った学生たちは、まったく会社勤めが無理、(2)大学では遊び放題、(3)留学すら毛嫌いする内弁慶。
 これらの教育姿勢を比較しても、日本と北欧3カ国は大きく差が開いた。埋めるのが不可能だ。後で述べるが、1人当たりの名目GDPの差を知ったら愕然とするであろう。

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ノルウェーの1人当たり名目GDPは日本の約2倍

 北欧3カ国のデータを参照されたし。各国とも日本と同じ面積か、やや広い。フィンランドは日本よりもやや狭いが、ここには山がない。平地換算ではフィンランドが広いかも、いや広い。
 結局、3カ国の面積の累計は、日本の3倍に匹敵する。対して人口の累計は約2,500万人で、日本の5分の1である。今からの将来は的確な予言はできないが、今までは移民の数が多くなかったので、人口増は目立たなかった。少数精鋭の機動的な国家経営が可能であったのだ。

 さー、愕然とするデータを紹介していこう。1人当たりの名目GDPをお知らせしよう。2015年の数字である。ノルウェーは7万4,622ドル、スウェーデンは5万8,590ドル、フィンランドは4万1,973ドルである。
 それに対し、日本はいったいいくらであろうか?何と3万2,486ドルである。
 おそらく大半の方々が『ウソー!!』と絶句するであろう。ノルウェーと日本のその差は、2.3倍も開いているのである。『よくまー、どうしてこれだけの差がついたのであろうか?』と首を捻るであろう。原因は、日本経済がこの20年間、成長してこなかったからである。

 この比較データでは、15年は1ドル120円当時、現在の100円で比較検証すると、日本の1人当たりGDPは3万8,983ドルになる。それでも、まだノルウェーとの差は1.9倍あるのだ。また、スウェーデンとも2万ドルの差があり、フィンランドとも3,000ドルの開きがある。北欧3カ国は、社会福祉国家として長閑なイメージを抱いていたが、冒頭に述べたように、資本主義の合理性を貫いている国家群なのである。だからこそ、豊かな生活を維持発展できているのだ。

 日本を顧みればどうなのか――。まさしく日本国家運営は、刹那的である。17年財政で言えば、45兆円の収入で100兆円の支出を行っているのである。55兆円は借金なのだ。北欧3カ国は、決して財政赤字を組まないことを建前にしている(非常時は別として)。国家財政の基本=質実剛健を貫いているのである。
 かたちだけで見れば、日本国家が世界で一番の社会福祉国家の呈をなしている。日本国民誰にでも、“義務を果たさなかった”方々に対しても、最低限の福祉の面倒を提供しているのは素晴らしいことである。しかし、借金漬けの福祉国家が、はたしていつまで続くことができるのであろうか?

(つづく)

●フィンランド
面 積:33.8万km2
人 口:約549万人(16年4月末)
GDP(名目):2,996億ドル(15年、IMF)
1人当たりGDP:4万1,973ドル(15年、IMF)
経済成長率:0.431%(15年、IMF)

●スウェーデン
面 積:約45万km2
人 口:約988万人(16年3月末、スウェーデン統計庁)
GDP(名目):5,711億ドル(14年、IMF)
1人当たりGDP:5万8,590ドル(2014年、IMF)
経済成長率:2.3%(2014年、IMF)

●ノルウェー
面 積:38.6万km2
人 口:521万3,985人(15年12月末、ノルウェー中央統計局)
GDP(名目):3,895億ドル(15年、IMF)
1人当たりGDP:7万4,822ドル(2015年、IMF)
経済成長率:1.565%(2015年、IMF)

●日本
1人当たりの名目GDP(US)ドル:3万2,486ドル(15年)

 
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