ヘルシンキ直行便の光を絶やすな!(6)~北欧3カ国の共通点・対比点(後)
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経済力でノルウェー
北欧3カ国とも、素晴らしい国家経済運営を行っている。世界の見本である。
スウェーデンは、『IKEA』という巨人を持っている。デザインでは、世界の最先端を走る国の1つが、スウェーデンである。そのデザイン力を駆使して、家具業界で世界を席巻しているのが、この『IKEA』だ。世界41カ国に進出して、雇用者数12万7,000人、年商3兆円を稼ぎ出している。フィンランドには『ノキア』がある。この企業はこれまでにもたびたび紹介してきたので、ここでは省略する。要するに、2カ国は世界を股にかけるビッグ企業が出現して、活性化の役割を担ってきたのだ。
ところが、ノルウェーには世界を凌駕する企業の存在はない。主力産業は、海運業と水産業である。たしかに、ノルウェー産のサーモンが、世界で一番美味しい。
この国がツイていたのは、1970年前後から北海油田で石油が産出されてきたからである。『このオイル利益を子孫のために残そう』と設立されたのが、『ノルウェー政府年金基金』だ。イギリスでは、同じ条件で北海油田の恩恵に被ったが、「子孫に財を残そう」という気持ちは持っていたのではあろう。しかし、現世の方々が浪費してしまった。また、ほぼオイル原油を掘りつくした。このノルウェー年金基金は1996年に、当時の為替換算で日本円にして約5,500億円を積み立てた。この運用ファンドは、現在、運用資産総額85兆円になっている(1ドル100円換算)。
現在のノルウェーGDP(名目)は39兆円であるから、このノルウェー年金基金は国民総生産の2倍以上の規模になっているのだ。まさしく、国民孝行の存在である。
優秀なファンドマネージャーを操り、しっかりした株投資の原則を貫いてきたからこそなせる業(わざ)だ。一方、日本の年金積立金管理運用独立行政法人は、投資失敗で目減りさせるだけである。いったい、どこで腕前の差がつくのか――。日本国民は、年金の将来に不安を抱くばかりである。
どうであれ、3カ国の経済力は、現在の局面ではノルウェーが一番と評価できる。歴史的には、スウェーデンが君臨していた
経済的には類似することが多いが、それぞれの国家の歴史環境、地理環境が違っている。だから、国の在り方、外交の在り方が大きく食い違ってくる。
北欧3カ国のなかで、歴史的な“巨人”はスウェーデンである。古代から中世、近代まで、ノルウェーはスウェーデンの統治下にあった(同一国家であったり、植民地になったりしている)。フィンランドも、中世時代の500年近く、スウェーデン王国の配下にいたのである。
だが近代から現代にかけて、スウェーデンは情けない立ち居振る舞いをする。たとえば第二次大戦では、中立宣言をする。「ドイツの方々もソ連軍の方々も、我が国に迷惑をかけないならばどうぞ国内をお通りください」とお奨めする。
かたやロシアに侵略されてきたフィンランドは、第一次大戦で久しぶりに独立を勝ちとった。だが、束の間の平穏は崩れ、第二次世界大戦に突入する。ドイツとソ連から侵略攻勢の圧迫が来る。終いにはヒトラーの圧力に屈して、枢軸側(ナチス・ドイツ、イタリア陣営)の軍門に下る。終戦後、社会主義ソ連帝国の動きをうかがいながら、ようやく独立を保つことができた。フィンランドのせめてもの救いは、ポーランドのようにソ連・ドイツによって国土分割されなかったことだ。ノルウェーは、明確な行動を選択した。ナチス・ドイツから侵略攻撃を受けた。イギリス軍は防衛協力をしたが、ヒトラーの当初の勢いを食い止めることができなかった。結果、ノルウェーは制圧される。ノルウェー愛国者たちは、『打倒ナチス・ドイツ』の戦いに生死をかけたのだ。この貴重な経験のうえに、ノルウェーは即座にNATO(北大西洋条約機構)のメンバーになった。ただし、EUには加盟していない。
スウェーデンは現在、EUには加盟しているがNATOには加盟していない。フィンランドもNATOには加盟せずに、EUには加盟している。軍事同盟への加盟を敬遠しているのは、フィンランドの地理的な位置、歴史背景からくるものか!!
北欧3カ国には、共通する部分も多いが、対比する部分も多い。この差は、それぞれの国が歩んできた道が違うからであろう。(つづく)
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