石原慎太郎都政の無責任体質は、日本の官僚組織そのものだ!(前)
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「都民ファースト」をスローガンに掲げる小池百合子都政は暴風雨が吹きつけるなかでの船出となった。石原慎太郎都政の置き土産である築地市場(東京都中央区)が移転する予定の豊洲市場(東京都江東区)の主要施設の下に土壌汚染対策の盛り土がなかった問題に関して、小池知事は9月30日の記者会見で「責任者を特定することは難しい」とする調査結果を発表した。責任は絶対に負わない官僚たちの陰湿な抵抗に遭った格好だ。
盛り土の変更、責任者の特定は困難
会見では、都の調査チームがまとめた自己検証報告書の内容を小池知事が説明。どの時点で誰が盛り土をしないことを決めたのかがポイント。段階的に地下空間への変更が検討されたため、変更を決めた個人を特定できないという内容だった。
この結論に小池知事は「いつ誰が、という点は、ピンポイントで指し示すのは難しい。流れの中で、空気の中で進んでいった。それぞれの段階で責務が生じる」と述べた。
また、小池知事は9月23日、都庁の定例会見で、豊洲市場の盛り土がなかった問題に関して、歴代の中央卸売市場長5人が都の調査に対し、空間の存在を理解していなかったと話していることについて、「キツイ言葉でいえば、無責任体制と言わざるを得ない」と厳しい口調で批判した。空気の中で決める無責任体制
「空気の中で決める無責任体制」。小池知事の発言に、2つの組織論を思い浮かべた。 1つは、評論家、小室直樹氏の『危機の構造 日本社会崩壊のモデル』(ダイヤモンド社)。科学的な総合的分析を欠く技術信仰は、当事者が真剣に努力すればするほど、意図とは反対の結果を生じ、おそろしい無責任体制が出現するという。
〈大戦争を引き起こしながら、明確な決断の主体は一人もなく、だれしも戦争に反対しつつも、集団における傾向に自覚的に対決しないままズルズルと引きずられてゆくうちに、気がついてみたら戦争になっていた〉(本書より引用)
かかる無責任体制が、戦前の軍人の行動を規定していた。都庁の官僚の行動も、戦前の軍人官僚と同型である。
もう1つは、日本人論で知られる評論家、山本七平氏の『「空気」の研究』(文春文庫)。小池氏は会見で、この本の名を持ち出した。現在でも、KY(空気が読めない人)として日常的に使われている。こんなフレーズだ。
〈「空気」とはまことに大きな絶対権をもった妖怪である。一種の「超能力」かも知れない。何しろ、専門家ぞろいの海軍の首脳に、「作戦として形をなさない」ことが「明白な事実」であることを、強行させ、後になると、その最高責任者が、なぜそれを行ったかを一言も説明できないような状態に落とし込んでしまうのだから〉
豊洲市場の盛り土なしの決定は、「空気」によって決定されたということだ。
(つづく)
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