ヘルシンキ直行便の光を絶やすな!(番外編)~苦難の小国、エストニアの悲劇
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ロシア帝国の侵略の歴史
来たる2017年、読者にお薦めしたいのは、バルト海クルージングである。また来年5月から、フィンランド航空がヘルシンキへの直行便を運航する。ぜひ、これを利用して、バルト海クルージングを楽しんでもらいたいと、お薦めするのである。
現在、世界三大クルージングのメッカは、エーゲ海、カリブ海、バルト海である。エストニアが位置するバルト海は、中世の時代から海運業が盛んで、商取引が活発であった。エストニア首都タリンは、中世の時代からバルト海海運の中心地として栄えてきた。この国が国家を成したのは、10世紀以降である。デンマーク人やドイツ騎士団が移住して発展した。13世紀からのエストニアの歴史は悲惨の連続で、長く辛酸を舐めてきたのだ。エストニアに加え、リトアニア、ラトビアを合わせてバルト三国と呼ぶが、これらの国は、地域大国となったスウェーデン王国、ロシア帝国から幾度も侵略を受けてきた。
第一次大戦の最中に起きたロシア革命によりロシア帝国が崩壊した機に乗じて1918年、エストニアは民族の悲願であった独立の栄冠を勝ち取ったのである。ところが、次の近代の侵略はさらに悲惨であった。民族存亡に関わる圧政が敷かれた。そしてまたもや39年に第二次世界大戦が勃発。バルト海の弱小3カ国は、ナチスドイツとソ連との間で、勢力争いの渦中に巻き込まれた。結果、41年にソ連の配下に転落したのである。独立期間わずか23年であった。これ以降のソ連支配は、言葉に表せないほど過酷なもので、民族が圧殺される危険性もあったのである。
だが突然、我が世の春が転がってきた。ソ連が自ら『ソビエト連邦国家を放棄する』ことを宣言したのである。91年のことだ。資本主義側は『社会主義が崩壊』と自画自賛した(現在はEU分裂に見られるように、資本主義体制も瓦解寸前なのだ)。要は、『ソビエト連邦下にある国々は勝手に生きろ!!』という通告なのである。エストニアは一滴の血も流さずに、92年に独立を手にしたのだ。
それから24年間、独立国家をどうにか保ってきた。だが前記した23年の独立期間を足しても、近代・現代合わせて47年間の独立期間しかない。ロシアへの警戒の念、おさまらず
91年、ソ連崩壊以降に独立を得たエストニアの動きは、素早かった。『もう二度と、ロシア帝国の軍門に下りたくない』という共通の危機感を有している国民の大半は、『西側の陣営へ移ろう』という意思決定した。その行動は機敏であった。経済体制の面では、EUに加わり通貨としてユーロを活用するようになった。軍事面では、NATO(北大西洋条約機構)に参加するようになった。西側の力を借りて、対ロシアの布石を打ったのである。
たしかに、最近のロシア・プーチンの動きは不穏である。オイル資金で国家財力はついてきた。己の長期政権を保つには、『大ロシア民族意識の高揚』が不可欠である。この財力を背景に、ウクライナ領土の一部を掠め取った。その動機の1つには、この大ロシア民族の高揚の目的があった。資本主義側は結束して、ロシアに経済制裁を強行した。さすがのプーチンも、この反撃は予想していなかったようだ。この経済制裁の効果は、充分に表れている。
エストニアを含めたバルト海弱小3国は、このウクライナ領土の掠め取りのロシアの横暴さに、極度に警戒の念を持った。『我々が国内での騒動を起こしたら、何かと口実をつけてロシア・プーチンは必ず攻め込んでくる』という強い疑念を有したようだ。一方、プーチン側も、元首都・サンクトペテルブルクの脇(エストニア国境からの距離330km)までNATO陣営の勢力が迫っている現実には、悔しい思いを抱き続けている。チャンス到来を待ち構えているはずである。
リトアニア人の気質は、質実剛健である。また、非常に時代の先進性がある。デジタル化の先進国5カ国は、イギリス、イスラエル、韓国、ニュージランド、そしてエストニアである。この国は、『小国ゆえに、時代の最先端スキルを磨くことが自国の防衛に役立つ』という安保論を、強固に信じている節がある。また日本に対しても、強い親睦の情を有している。友人付き合いする価値のある国である。日本からは飛行機で9時間と、意外と近い距離なのだ。
(了)
今回、このシリーズ番外編として『エストニア』を追加した。
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