大戸屋・創業家の代理人になった、大物フィクサーの正体(後)
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父親は「アラビア太郎」と呼ばれた山下太郎氏
正木烝司氏とは何者か――。
正木氏は、土地の緑化工事を基軸とするコンサルタント会社、(株)泰正(東京都中央区)の社長だ。だが、この表の顔よりも、政財界にまたがる幅広い人脈を活かした大物フィクサーとして知られる。
一族は怪物一家。父親は「アラビア太郎」と呼ばれた山下太郎氏。戦前、大陸に渡り満鉄の社員用の簡易住宅の建設を一手に引き受けて財を成し、「満州太郎」の異名をとった。戦後は、ケタ外れの野心と行動力で、海底油田を一発で掘り当てて、アラビア石油(株)を創業。「山師太郎」と呼ばれた山下氏の真骨頂であった。
山下太郎氏の長男は、水野成夫氏の養子となったアラビア石油元会長の水野惣平氏。水野成夫氏は戦前、日本共産党の最高幹部で獄中転向。戦後は「財界四天王」と称され、(株)フジテレビジョンを創設した怪物だ。
次男が、正木家の養子となった正木烝司氏。正木家の一族には、三鷹事件や菅生事件で共産党員の被告人を弁護するなど、反権力弁護士として名を馳せた正木ひろし氏がいる。こうした怪物たちを見て育ったのが、正木氏だ。フィクサーになる度胸が備わっている。
ライブドア事件、アコーディア・ゴルフ事件に登場
正木氏の名前が情報関係者の口にのぼるようになったのは、「劇場型乗っ取り」とテレビのワイドシーを賑わしたホリエモンこと堀江貴文氏による(株)ニッポン放送株の買い占め事件。ニッポン放送を乗っ取り、その子会社であるフジテレビジョンの支配下を置くことを狙った。ニッポン放送株をめぐる、(株)ライブドアの堀江貴文氏とフジテレビの日枝久会長との壮絶バトルが繰り広げられた。
2005年、フジテレビがライブドア保有のニッポン放送の株を買い取ることで和解。フジテレビはライブドアに解決一時金として、1,473億円を支払った。このとき、フジテレビの日枝氏にライブドアとの和解を勧めたのが正木烝司氏だ。
堀江氏は〈フジテレビの日枝(久会長)さんと和解を仲介してくれた正木(烝司)さんと3人で、正木さんのお宅で食事をした〉と語っている。(「AERA」2006年12月11日号)次に、正木氏の名前を目にしたのは、ゴルフ場運営会社、PGMホールディングス(株)による(株)アコーディア・ゴルフの乗っ取り騒動のとき。13年に旧村上ファンドの(株)レノが参戦した。このときフィクサーとして動いたのが正木氏だった。「週刊東洋経済」(13年2月9日号)はこう報じた。
〈アラビア石油創立者の故山下太郎氏を実父に持ち財界に幅広い人脈を張る正木(烝司)氏は今回、キーマンと目される一人。村上氏との関係は否定するが、レノの役回りは(PGMによる)TOB(株式公開買い付け)を阻止し、友好的スポンサーへ橋渡しするまでの「用心棒」ということになる〉
PGMの乗っ取りを撃退するために、旧村上ファンドを引っ張ってきたというわけだ。真偽のほどは定かではないが、いかにもフィクサーらしい仕掛けと評判になった。
今回、正木氏は大戸屋の創業家の代理人となった。正木氏の狙いが、久実氏の長男・三森智仁氏の経営への復帰と、窪田健一社長の追い落としにあることは言うまでもない。経営陣の総入れ替えを狙って、来年の株主総会に向けてプロキシ-ファイト(委任状争奪戦)を仕掛けることになろう。
(了)
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