総売上4,000億円突破は外へ外への突進力あるのみ(後)
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西日本鉄道(株)
4,000億円をどう詰めるか!
西鉄は、17年3月期の営業収益を3,718億円と見込んでいる。その内訳は物流業が7.5%の伸びを計画して領導する勢いだ。あとは不動産業2.5%、流通業2.1%、期待のレジャー・サービス業が1.9%と微増の計画である。恐らく17年期ではこの営業収益を達成するであろう。だが残りの2期、最終19年3月期に4,000億円に到達するには282億円の営業収益を積み上げる必要がある。7.6%の伸長率を達成しなければならないのだ。一番深刻な問題は、北部九州の従来の商圏でかつ同様な業種の展開では新たな加算はできないということが明白になっていることである。北部九州から飛び出すしか活路を見いだすことができない。282億円の積み上げは外部で稼ぐしか方策が残されていないのだ。そもそも運輸業には一挙に外部に事業移転が不可能であるという特性がある。だから一進一退しか期待できないのだ。
収益性の高い不動産業はどうなのか。577億円(17年3月期)の分母を嵩上げするには外部へ打って出る覚悟がありありと見える。まず貸家業の東京進出を狙って日本橋にオフィスビルを建てた。ところが天神再開発の大事業が迫ってきている。天神1丁目に毎日新聞が有している毎日会館がある。このビルと西鉄日本橋ビルと等価交換した。これはやむを得ない戦略的処理であった。機会があればいずれ再び東京にビルを購入するであろう。
マンション・住宅の分譲事業の根幹戦略は、脱・北部九州である。現在、本州で4件の物件を販売している。京都、東京、さいたま市、川崎市である。主体は東京および都市圏になる。マンション販売も市況に左右されるが、東京都市圏では19年までは極端な落ち込みはないであろう。このマンション分譲で50億円の上乗せを絶対に成し遂げたいものだ。戸建を主体とした事業は現在ベトナムで行っており、インドネシアでも開発に乗りだすことを発表した。インドネシア事業は19年3月期には間に合わないだろう。はたしてベトナム事業(累計加算額80億円)は19年3月期までにプラス30億円になるだろうか。
流通事業は営業利益には貢献度が少ない。けれども営業収益(売上)は確実に15億円前後伸びている。17年3月期825億円が目論まれているからこれに“2期×15億円”プラスすると流通事業は最終的に855億円になる。この事業部の30億円を加算すると累計1,100億円になる。筆者は「もう大型スーパーのM&Aはない」と断じたが、西鉄経営陣が売上優先を選択すれば100億円の増収は容易にできる。この仮説は省略するとしよう。
レジャー・サービス業の主体はホテル事業である。16年3月期において、全体の営業収益387億7,200万円に対してホテル事業は220億2,100万円(構成比率56.8%)だ。新規ホテルオープンを急ピッチで進めている。国内では京都で17年4月、名古屋が18年に開業予定である。海外においても同様だ。まず15年秋にソウル明洞にホテルオープンした。釜山でも17年に開業する。バンコクでも60億円投資して250室のホテルを建設するという。バンコクの分は19年3月期には貢献できないだろう。経営陣もこのホテル事業のプラス売上をしっかりと計算している。新規4ホテル×12億円=48億円と手堅く試算する。そうなると累計158億円となる。あとは124億円が残るのみとなった。
すべての要は国際物流事業が背負う
物流業は16年3月期営業収益861億円から17年3月期926億円と65億円の増収を想定している。国際物流事業において投資を集中して新規ルートを開拓しているから自信満々で立ち迎えるのである。特にアジア地区の掘り起こしは凄まじい。筆者の判断では19年3月期にはこの物流業は1,000億円突破することは間違いない(4,000億円の規模になるから営業収益全体の25%を占めるようになる)。1,000億円をはるかに突き破ると見るが、ここも手堅く計算しよう。そうすると74億円のプラスになる。通算累計232億円となるので50億円足りない。しかし物流業のさらなる上乗せ、他事業の伸びがカウントできる。かなりの確率で4,000億円に到達できるのではないか!
懸念材料は国家間の対立・騒動が激化する、テロが火を噴くことである。そうなると世界の物流が停滞してしまうリスクが横たわっているのだ。この懸念材料が薄まれば物流業は西鉄事業の牽引車になれる。上記したように売上全体の25%占める物流事業には大きな存在感がある。また売上地域比率でも、筆者の試算では従来の市場である北部九州以外での売上が30%強になるのではないかと推察する。“地元福岡の内弁慶・西鉄様が様変わりした。他所から銭を稼いで故郷へ持って帰ってこらしゃる”という評価が高まり尊敬されるようになるのではないか!
「西鉄の新時代の始まりか」と囁かれるための貢献者は国際物流業である。間違いなく「福岡で国際事業に成功したのは西鉄さん」と言われるようになる。そうなると“西日本鉄道”という社名も不似合いとなり事業組織形態も陳腐な感じがする。当然、経営陣も全面的な変革を検討していると思うが、“新時代の始まり”のチャンスを確実に掴んでいただきたい。
(了)
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<COMPANY INFORMATION>
代 表:倉富 純男ほか2名
所在地:福岡市中央区天神1-11-17
設 立:1908年12月
資本金:261億5,729万円
売上高:(16/3連結)3,614億6,500万円関連記事
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