パンの木村屋が閉鎖~『のれん分け』の今昔(後)
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福岡県久留米市に本社を置き、「キムラヤ」の屋号で小売り店舗を展開していた老舗パン店、(株)木村屋が1月31日、全店舗を閉鎖し事業を終了した。木村屋は、あんぱんを考案した東京の(株)木村屋總本店からのれん分けを受けた企業だ。店舗を開業する方法は、かつては“のれん分け”、今日は“フランチャイズ”へと変わっている。のれん分けと現代版のれん分けであるフランチャイズについて考えてみよう。
日本マクドナルドは現代版のれん分け制度を創設
戦後、徒弟制度が崩壊し、のれん分けは姿を消した。代わって、フランチャイズが店舗を新店舗開業の主流になっていった。
日本マクドナルド(株)(現・日本マクドナルドホールディングス(株))の創業者、藤田田氏は、フランチャイズを“現代版のれん分け”にした元祖といってよい。1971年(昭和46年)5月、米マクドナルド社と貿易会社、(株)藤田商店の合弁で、日本マクドナルドが設立され、藤田田氏が社長に就いた。
米国に本社を置く、外資系企業でありながら大家族主義を貫き、普通の日本企業よりも日本的経営をおこない「青い目をした日本企業」だったことはよく知られている。経営は、米マクドナルドからほぼ独立していた。藤田氏は社員をビジネスパートナーとみなした。社員が将来、生活していてけるように「独立支援制度」を取り入れた。現代版のれん分けである。その制度を活用して店長たちは独立、フランチャイズ店を開いた。社員の独立をマックの増収につなげる一石二鳥の策だ。1990年代、店舗数を900店から3000店に急拡大した。FC店のオーナーのほとんどが、元社員だった。
のれん分けとチェーン店の根本的な違い
今日、個人が開業する時はフランチャイズ方式が主流である。正社員として勤務して店長になった後、フランチャイズ本部から、独立してオーナーになっても大丈夫だろうと認められた後、本部のサポートを受けながらフランチャイズオーナーとして独立する。コンビニや外食でよく見かける開業方法だ。これに対して、のれん分けは、社員として数年勤務しなければならないため、すぐに開業できないデメリットがある。
前出の伊藤雅俊氏は著書『ひらがなで考える商い』(日経BP社)で、のれん分けとチェーン店の違いについて書いている。
〈のれん分けとチェーン店はまったく違います。のれん分けされた店は、経営面では独立しているからです。同じのれんを下げている仲間であっても、経営責任も経営判断も別個です〉
フランチャイズは、本部が経営判断する。チェーン店は商売替えができないが、のれん分けは、それが許される。経営的には独立体だから、商売替えはできる。イトーヨーカ堂が、スーパーに商売替えでできたのは、のれん分けした企業だったからだという主旨だ。
経営が独立しているのれん分けと、経営の自由度が制限されるチェーン店。フランチャイズオーナーとして開業を志す人々には、なかなか示唆に富んだ指摘だ。(了)
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