溶けて溶けてどこへ行くの? 我々には覚悟はあるか~九州建設まで溶けるの、溶けないの(10)
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理想の組み合わせ・M&A
今回はM&Aの買収側の徳倉建設の概略から紹介していこう。まず「買収先が徳倉建設だ」という情報が流れた際に「徳倉建設は、まだ福岡に支店があったのかな?」という声が多く聞かれた。確かに平成の初めには福岡でもかなり積極的に受注活動を行っていた。土木主体の工事で活躍していたが、最近の福岡での活動は縮小気味であった。だからこそ永年、福岡・九州で実績を積んできた同社の経営陣がこの地区の深堀の機会を切望していたことは間違いない。念願のチャンスが転がってきたのだ!!
徳倉建設は1928年創業であるから九州建設よりも30年業歴が浅い(資料1)。徳倉一族で経営されてきたが、法人化は1947年である。総合建設業で、名古屋・中部地区エリアを拠点としている。また東京地区でも受注実績がある。16年3月期の連結決算(資料2)では売上441億円、単独では296億円の規模で12年3月期には15億近い赤字をだしている(資料3)。単独決算比較では地元・上村建設の方が内容では上位であることが明確である。
徳倉建設は名古屋証券取引所に上場している。売上構成の16年3月期において建築198億23.000千円、土木12,065千円合わせて318億,89,000千円と連結売上の72.3%を占める。建設(建築・土木)受注の41.2%を官需に頼っているのが同社の特徴である。連結会社だけでなく関連会社(非連結)の数多い。今回、九州建設のM&Aで売上が99億円(16年5月期)であるから単純加算すると540億円になる。
徳倉建設が九州でシャカリキになって営業活動しても99億円上積させるのは無理である。仮に今回27億円のM&A資金を投資したとしても安いものだ。九州建設側でも辻一族もハッピーでありオーナーが名古屋も名門であれば社員達も一安心であろう。まずはお互いに丸く収まるM&A劇となった。
人材スカウトの依頼
徳倉建設の経営陣に1つだけ警告を発しておく。人材スカウトの件である。親しい建設業界のトップたちから「コダマさん!!九州建設の社員にコネがなかろうか!!特に技術者が欲しいのだが、あっせんしてくれないか」というものだ。すでに3件の依頼がきている。ということは「九州建設は技術水準が高い」という前提で、たくさんの同業者が虎視眈々と水面下でスカウトをしているのだ。この事実だけは告知しておく。
憂慮される事態を徳倉建設の経営陣たちも充分に認識しておられるとは思う。この5年間は九州建設の自立性を認める統治策を打たれることだろう。もし、早急に「人事交流」の名目で名古屋と福岡の社員交換策を強行したら大変なことになるということだ。恐らく九州建設の社員達の退社が続出するだろう。レベルの高い社員は引く手あまただ。一晩で人材が消えてしまう。徳倉建設の経営陣ならご承知なはずである。
システムエンジニアリングを主業としている、ある上場会社の社長から聞いた話。現在、業界はSE(システムエンジニア)の売り手市場である。「SEさま、よろしくお働きいただきます」と低姿勢で対処しなければならない市場だそうだ。資金力に物を言わせてある会社を買収した。買収後、2週間経ったころにはSEは誰も出社しなくなったとか。まさにもぬけの殻、スカスカになったそうだ。この社長いわく、「資本力では解決できない悪夢を見た」。このM&A失敗がトラウマとなって、いまだに尾を引いているとか!!
事業継承に悩みある建設関連企業の方々にも注意を喚起しておく。「今が売り時ですぞ!!業績が悪化してからでは買い手は来ない。こちらがお願い賃を払うことになるよ」。
(了)
【資料1】
■徳倉建設(株)
代表者:徳倉 正晴
所在地:愛知県名古屋市中区錦3-13-5 中央マンションビル2F
設 立:1947年4月
主業種名:一般土木建築工事業
資本金:2,368,032千円
従業員:333人【資料2】
※クリックで拡大
【資料3】
法人名
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