2024年11月23日( 土 )

溶けて溶けてどこへ行くの? 我々には覚悟はあるか(9)~巨星堕ちる・ソロン田原学氏(5)

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お客の志向もチェンジする

 この大型団地販売の田原手法は同業者に模倣された。もっとも参考にしていたのは理研ハウスである。各地方都市で展開していった。西武ハウスも場所によっては応用した。2008年リーマン・ショックのころまで、ソロン流儀の街づくりがあちこちで行われた。価格が安いため、「我がマイホームを手に入れるチャンス」と購入者たちは我先にと契約に押し寄せた。

エバーライフリオ筑紫野

 大牟田線沿いの筑紫野市内で大型団地を見かける。写真参照のように1996年6月エバーライフリオ筑紫野(15階建て270戸)、2000年4月エバーライフネアシティ筑紫野(15階建て380戸)も連続して売りだした。一戸2,000万円台を切った商品価格帯が主力であった。2000年を境にして、「どうも昔の住宅公団の団地と変わらないな」という疑問の念を抱く購入者層も増えてきだした。

 確かに大型団地が登場して人は増えた。しかし、「街としてのインフラが何もない」という不満の声が高まりだしたのだ。購入する人たちの動機が時代と共に変化してきたということであろう。売りだし当初のときは、購入する側も「家の頭領として一生の買い物=マンションを買って威厳を保ちたい」という誇りの一念で購入した。一国一城の主(家持)になりたかったのであろう。「1,000万円台で家持になるのであれば安いものだ」と衝動買いしてくれた層もいた。

 「我がマンションを購入したものの、田んぼの上や工場跡地に立った物件周辺には何もない。生活インフラに欠けるなー。ただ寝るために帰るだけのマンションはいらない」という住宅哲学を持ち始めた客も増えだしたのである。社会が豊かになってくれば、住宅に対する価値観がチェンジするのは当然なのだ。最近の極端な例になると、巣づくり=我が家族を創ることを敬遠する輩も増えている。

エバーライフネアシティ筑紫野

 筑紫野市の2つの物件は好対照な結果となった。エバーライフネアシティ筑紫野は、朝倉街道という元々交通の要所だったところにあり、西鉄大牟田線、JR鹿児島本線に隣接している。同業者たちも後を追って近隣にマンションを建て、林立状態となった。人口が増えれば後追いでショピングセンター・病院などが充実するようになり、生活インフラの面で快適になる。

 しかし、当初から街づくりのプランが練られていたわけではない。結果オーライに過ぎないのである。エバーライフリオの周りには“ゆめタウン”が進出し、買い物するには便利になったが、街並みはさほど代わり映えしない。街づくりの本格的なテコ入れが必要であろう。街づくりはデベロッパー単独で完成することは不可能だ。だが、今後は街づくりの専門家とタイアップした、トータルの計画推進が重要である。

債権カットの再生企業へ指定される

ネアシティガーデン 西の丘

 1999年当時、田原社長から「貴方は野方に住んでいるから近隣の地の利は詳しかろう。自宅近くの拾六町で坪6万円(平均)で購入する」と告知された。「いくらなんぼでも坪6万円の土地があるものか!!」と反発したが、素人の浅はかさ。福重信号から国道202号線を2km西に向かうと登り坂になる。登坂を極めたところが高崎信号になる。道路の上には西九州道の高架が走っている。

 その高崎信号に至る西進行左手(南側)には、昔、生の松原ゴルフ場があった。現在、西の丘の高級一戸建て団地がある。その方面が国道202号線に面しているのだ。そこを造成してネアシティガーデン西の丘を売りだした。戸数347件、2002年4月のことである。これまた価格が安く、人気を博した。それから2年後にソロンは再生企業へ指定を受けた(この件はシリーズ(9)で触れる)。田原氏の“土地を安く仕入れて大型マンション販売”戦略は、一応、辻褄を合わせて貫徹できたという評価はできる。

デペロッパーによる街再生のお手本

天神プレイス

 中央区今泉1-2-23の「天神プレイス」が人気を博している。高級賃貸マンション、オフィスビル、マンションなどで構成されている。この地域は、つい10年ほど前まではホテル街として利用されることで名を馳せていた。また福岡市内でも軽犯罪事件の発生がトップクラスであったことで、一般人には敬遠されていた地区であった。この1,800坪用地はフクニチ新聞社が保有していた。この新聞社が労働争議、営業不振で倒産、一躍この場所が注目されだしたのだ。

 まずマンション業者・東峰住宅産業が購入した。目的は都市中心の高級マンション売り出しである。この会社が倒産して都市整備機構が引き取った。この土地を50年使用権契約で譲り受けたのが、(株)アーム・レポ(本社:福岡市中央区)である。この会社が「天神プレイス」の概要を練り上げて完成した。しかし、08年リーマン・ショックの影響で手放した。

 買い手は健康食品通販業者の(株)やずやホールディングス(本社:福岡市南区)である。現在は同社の関連会社が運営している。この「天神プレイス」が誕生したことで、今泉地区が若者の結集するゾーンに様変わりした。飲食店の数の密度も非常に集積されるようになった。筆者の友人・今泉の戸建住民が「街が非常に明るくなった」と感謝している。この今泉再生が1つの成功モデルになるのではないか!!

 
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