2024年12月26日( 木 )

宅配危機のヤマト運輸~宅急便の生みの親、小倉昌男氏の突破力を想起せよ!(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 宅配便最大手のヤマト運輸(株)が、悲鳴を上げている。ネット通販の拡大と人手不足で、荷物が増えるほど人件費が膨らむ“利益なき繁忙”に苦しむ。「当日配達」や「再配達」といった過剰サービスが限界に達した。“宅配危機”だ。
 こういうときこそ、「クロネコヤマトの宅急便」の生みの親である故・小倉昌男氏の“突破力”を想起すべきだ。

アマゾンの宅配を一手に引き受け、取扱個数が急増

 持ち株会社のヤマトホールディングス(HD)(株)と傘下の事業会社ヤマト運輸(株)は4月28日、2017年度の事業計画を発表した。宅配便の基本運賃を9月中にも140~180円値上げするほか、宅配便の総量コントロールにも取り組む。従業員の負担減を目的に、17年度の取扱個数は、前年度から約8,000万個少ない約17億8,700万個に抑える。
 ヤマト運輸が総量調整を検討中の法人企業は、計1,000件程度。ネット通販最大手のアマゾンジャパン合同会社をはじめ、取引量の多い企業を対象に、撤退も視野に入れた交渉を実施中という。

 宅配危機を招いたのは、“ネット通販の巨人”アマゾンジャパンの存在が大きい。アマゾンが消費者に支持されたのは、無料配送や即日配送など、宅配会社と二人三脚で磨き上げてきた配送サービスにある。配送の大半は、ヤマトHDのヤマト運輸と、SGホールディングス(株)傘下の佐川急便(株)が引き受けてきた。
 ところが、佐川急便は13年4月、アマゾンの宅配から撤退した。採算が取れなくなったのが理由だ。その結果、ヤマト運輸がアマゾンの宅配を一手に引き受けることになった。これで取扱個数は急増した。

 だが、宅配単価は下落し、利益にはつながらなかった。アマゾンが時間指定や当日配送といったサービスを拡充すればするほど、配達効率が下がって、ヤマトの利益を圧迫する。

 ネックは、再配達システムにある。再配達は無料。4分の1は再配達だ。ドライバーは毎日21時間までの業務が常態化して、長時間労働の温床となった。ヤマトHDは全社員の過半数を占める4万7,000人に対して190億円の残業代の未払いを支払う。

 かくして、ヤマトHDの17年3月期の連結決算は、売上高に当たる営業収益は前期比3.6%増の1兆4,668億円だが、営業利益は49.1%減の348億円と増収減益だった。ヤマトHDの山内雅喜社長は、「17年度は、コスト構造の見直しと体制の立て直しに専念する。1年かけて事業構造を変革したうえで、18年度以降の持続的成長につなげたい」と語っている。

 この宅配危機を乗り切るために、「クロネコヤマトの宅急便」の生みの親である、故・小倉昌男氏の突破力を想起すべきだ。

(つづく)

 
(後)

関連記事