社長請負5社目、玉塚ローソン会長の転職先はIT業界(前)
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ローソンの会長を5月30日に退く玉塚元一氏が再就職先に選んだのは、東証1部上場のIT(情報技術)企業、ハーツユナイテッドグループだった。同社はゲームなどのソフトウエアに不具合がないかを検査するサービス大手。転職先として下馬評にも上がっていなかった。そこには、複雑な事情がありそうだ。
想定外だったHUGへの転職
(株)ハーツユナイテッドグループ(HUG)は5月15日、玉塚元一氏(54)を代表取締役社長CEO(最高経営責任者)とし、現在同職を務める創業者の宮澤栄一氏(44)を取締役会長にする人事を発表した。6月27日開催の定時株主総会とその後の取締役会で正式に決定する。
あらゆるモノがネットにつながるIoTの広がりで、自動車や家電など幅広い分野で検査の需要が急増する見通し。〈さらなる大きな飛躍に向けた進化・成長を加速させるため、経営に関する豊富な経験と実績を持つ新しいリーダーが必要であると判断した〉と交代した理由をリリースした。
社長請負業である玉塚氏が5社目の社長に選んだのはIT企業のHUGだ。4月12日の(株)ローソンの退任会見で「まったく違う業界に行くかもしれない」と語っていたから、流通業ではなく、成長が著しいIT業に転職することは予想がついた。だが、HUGは想定外であった。
流通担当のアナリストたちの間では、楽天(株)に移り、苦況のネット通販モール「楽天市場」の再建に携わるという観測がなされていた。筆者も、本コラムで、転職先は楽天と予想していた。だが、予想は見事外れた。
なぜ、予測が狂ったのか。関係者の見方は一致する。「あの記事が災いした」。そう、あの記事だ。玉塚氏がローソン会長の電撃辞任を発表した2週間後だった。
玉塚氏をハメた美人詐欺師によるM資金
『週刊新潮』(17年4月27日号)は「ローソン『玉塚会長』の退任の裏に『M資金』と『美人詐欺師』」とのタイトルのスクープ記事を報じた。スター経営者である玉塚氏が、ローソン会長を退任したのは、M資金の世界で蠢く怪しい面々と関わりがあったからだという。
M資金とは、GHQのマーカット少将が押収した金塊がもとになった巨額資金を融資する詐欺話だ。過去には全日空の大庭哲夫社長が欺されて失脚したり、日産自動車の副社長も引っかかって辞任している。俳優・田宮二郎の自殺の一因もM資金詐欺にあったことは有名な話しだ。
いまだにM資金話が通用しているとは驚きだが、さらに仰天したのは、中心人物が岩合直美女史だったこと。バブルの時代、「希代な美人詐欺師」としてつとに有名だった。かつて〈高島屋との架空取引をでっちあげ、北朝鮮系の金融業者・具次龍氏(故人)から3500億円を引き出した事件〉(同誌)で1990年に逮捕された。北朝鮮への送金王と呼ばれた具氏は1994年、愛人のマンションを出たところで射殺された。
岩合女史を中心とする詐欺グループは、玉塚氏の直筆の「確約書」を手に入れた。ペーパーにサインしたことが玉塚氏の命取りになった。岩合女史が、現在も現役で玉塚氏に接近していたとは、「雀百まで踊りを忘れず」と驚嘆した。
こうした怪しげな連中と接触していたことは、玉塚氏の言葉を借りれば〈甘かったと言われればその通り〉(同誌)となる。いかに「プロ経営者」とはいえ、金融スキャンダルに足をすくわれた玉塚氏を招聘することに、有名企業が二の足を踏んだのも無理はない。
(つづく)
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