イタリア元気レポート(5)~世界の画風はスポンサーがつくる
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ミラノは展示ビジネスの拠点 その新拠点フィエラ・ミラノ
ミラノは世界有数の展示ビジネスのメッカである。ミラノ市中心部の既存施設フィエラ・ミラノ・シティが老朽化したため、2005年、約7キロ離れた郊外ロー・ペーロに新設したフィエラ・ミラノ。展示会場面積は34.5万平方メートル、日本展示会協会によると世界の展示面積のランキング第4位(2016年時点)という広大な展示場である。東京ビッグサイトの約4倍の広さをもつ。設計は、ローマ出身の建築家マッシミリアーノ・フクサス。
フィエラ・ミラノは重要な会議の中心としてだけでなく、毎年120を超える各種の見本市、フェア、各種行事で賑わっている。4月には、世界最大級のデザインの祭典といえる「ミラノサローネ」が開催される。ミラノ市内各所で行われる「フォーリサローネ」と合わせて、毎年約3,000もの企業・団体が出展し、国内外から約40万前後の来場者があり、世界のトレンドを牽引する、もっとも注目される大イベントとなっている。展示イベントに年間200万人が訪れているそうな。
未来型IoTスーパー視察、道半ば
7月3日は一番楽しみにしていた全イタリアファッション会議所表敬訪問だったが、シリーズ(1)で紹介した通りにミラノに到着したのが1日遅れて3日の昼過ぎとなり、キャンセルとなってしまった。視察団の中には繊維関係者もいたので、ずいぶん落胆した様子であった。福岡商工会議所も、福岡市をファッションの都市として売りだしている。世界先端を走るミラノの関係者たちと是非、意見交流会を行いたいものであった。これは非常に残念なり。
3日、夕方には未来型IoTスーパーマーケットを視察した。2015年のミラノ万博で話題になったスーパーの現場を見たわけだが、決済場所=レジの無人化を実現している。しかし、まだまだ改善・実験段階のようである。アマゾンは2016年から『Amazon GO』を開始している。『レジなし、客は商品を持って店外に出るだけ』をうたい文句にしている。福岡のスーパーでも無人レジが現れだした。だが、アマゾンの謳い文句が実現するには時間が今しばらくかかる、と感じた次第である。
ブレラ美術館で感じたこと
ミラノ大聖堂から徒歩15分のところにラファエロの作品が数多く展示してあるブレラ美術館に行った。確かにラファエロ作がたくさん展示してあった。大作を目の前にしてあらためて「ルネッサンスとは何か」を胸に問うてみた。絵画でいえば、従来の宗教画に人間の魂を込めた絵が増えてきたのが1500年代である。この人間味至上主義を謳ったのが、芸術のルネサンスなのだそうだ。その画風は画家本人でなくスポンサーが求めるから築かれる、と説くのは福岡市西区在住の中島淳一画伯である。
当時の画家に対するスポンサーは教会である。または地域を支配する貴族や豪族だ。ミケランジェロはフレンチェとミラノを行ったり来たりしていた。スポンサーが課題を投げるたびに制作のために往来していたのだ。1500年に入ると教会の意向にも変化が表れ始めた。時代背景もあるであろう、「やはり絵の中にも人間味のある雰囲気を醸しだすことが大切である」という意向が主流になってきたのである。画家たちもその流れを敏感に察知した。
では何に源流を求めるべきか?自問自答の中で「ギリシャ・ローマ時代に戻る」という結論に達した。当時はキリスト教の感化は皆無であった(ギリシャ時代はキリスト教自体が存在していなかった)。ギリシャ・ローマ時代の芸術の根幹は、人間存在至上主義として人間力を称える作品が大半であった。ルネッサンスとはまさしくギリシャ・ローマ市民国家時代の人間の尊厳をキャンパスに復元することであったのだ(狭義の意味で)。
ブレラ美術館の中で異色な感じを抱いたのが1620年以降の作品である。ルネッサンスの画風と比較すると違和感を抱く。1800年代の自然主義手法=ミレーの作風に繋がる作品が見られるようになるのである。中島画伯の解説によると「1600年に入ると商売人・事業家たちがパワーを蓄えるようになり、教会や貴族に代わってスポンサーになり始めた。当然、従来の画風を超える作品を求めるようになる。これに追随する画家が出現するのは成り行きであった」とのことだ。
余分な追加。中島画伯も抽象画が得意の領域である。現代絵画の主流では抽象画が健在である。19世紀前半にアメリカの資本家=成金が台頭してきた。彼らはヨーロッパの伝統に劣等感を抱いていた。絵画のスポンサーとしても活躍始めた際に「過去にない画風を育成しよう」と意志一致を図った。その意図をくみ取った画家たちが抽象画の制作に乗りだしたのである。現代抽象画の源はこの150、160年足らずのことなのだ。
(つづく)
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