2024年11月24日( 日 )

イタリア元気レポート(10)~ユニークな関係構築を

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現状の関係は不満足なデータばかり

 8日間のイタリア視察では考えることばかりであった。東アジアの日本、ヨーロッパにおけるイタリアと地理的な条件こそ違え、置かれている、問われている立場や役割は似ている。筆者は二国間の関係をさらに緊密にする必要性を訴えたい。しかし、実質的なデータを見る限り日伊両国は疎遠な関係だ。投資残高でみるとイタリアの日本へのそれは1,120億円、日本からの残高は4,177億円である(2015年12月)。特にこの経済グローバル時代にイタリアからの融資残高1,120億円は少ない。

 貿易額ではシリーズ(6)で報告した通り日本からみた輸出額は35億9,500万ドル、輸入額75億2,400万ドルで日本側が39億2,900万ドルの輸入超過である(2015年度)。為替1ドル=110円に置き換えると4,322億円の貿易赤字になる。日本側からは強力な輸出品が乏しい。逆にイタリア側は農産物(ワインなど)、衣料品、車など魅力ある輸入品を持っている。貿易総額は110億ドルであるが、これが200億ドル水準になっても然るべきである。現状、物足りない状況が続いている。

 観光客の往来数はイタリア人の日本への数が103,198人、日本人のそれは353,547人となっている。観光数では距離の関係を考えると「これは適正な数かな」と判断する。あと2国間の人脈交流はどう見るのか!筆者の乏しいイタリア人脈から評価するにも、これまた「交流は乏しいな」という感じである。イタリアと掛けて何と解く。「塩野七生の『ローマ人の物語』しか思いだせない」という人が多数であろう。

北部九州では地味な活動の蓄積を!!

まず第1になすべきことはミラノの家具・デザインとの接点を築くことである。博多区にリッツウェルという個性的な高級椅子を提供している会社がある。最初はミラノ周辺の家具製造会社から輸入していた。もうかれこれ10年になるであろうか。4月には家具・デザインの展示会としては世界最大の『ミラノサローネ』が開かれる。この展示会にリッツウェルはブースを設置して出店するようになったのである。「イタリア家具を学び自前で開発した商品で恩返しできるか」に挑戦したのである。

 そしてちょうど5年前から単独で果敢に出店を手掛けた。この友人経営者の健闘に敬服して3年前の『ミラノサローネ』に視察に行った。外国人だけでも20万人押し寄せるというが、凄い混雑状況であった。リッツウェルのブースにようやくたどりついて驚いた。世界からきたバイヤーたちが商談に挑んでいるのだ。ミラノで学んだものをすべて吸収し尽す。そして日本から逆にミラノへ通用するかどうかの試練を自ら挑むとは天晴な事業魂である。

 ファッション、デザインを売り物にする福岡はミラノで通用するかどうかを挑戦すること企業の後押しをするべきなのだ。

 第2は北部九州でイタリアワイン、イタリアンの普及に一役買うことである。さらにその縁で和食・日本酒・焼酎を広めてくれるビジネス人脈をイタリアに構築することである。西中州に『ナポリ』という店がある。このオーナーはナポリ人で来日20年。「ナポリに行く」と言ったら「俺の身内に会ってくれ!!」と紹介状をくれた。それだけお節介で情に厚いのである。オーナーの身内に会うつもりでいたが、時間が取れずに会う機会を得られなかった。

 日本人でイタリアンを嫌うのは変人の部類に入る。1カ月イタリアにいても日本食を恋しくなることはないであろう。逆も真なり。イタリア人も日本食が大好きなはずである。まず先に我々がイタリアワイン・イタリアンの普及で汗をかく。義理堅いお節介ものの現地イタリア人に日本食・日本酒を伝道していただく。成功確率はかなり高いとみる。勿論、才覚のあるネットワーク力のある人物にしか頼りにならないが……。

 第3は観光ビジネスである。手法は第2で述べてきたことを同様に実践していくことである。北部九州からイタリアへのビジネス強化は、地味な活動を積み重ねていくしかないと思う。今回のイタリア視察で筆者も微力ながら濃厚な関係づくりの一端を担う覚悟をした。まず来年はシシリー島タオルミーナへのツアーを6組で組むことにした。

(了)

 
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