溶けて溶けてどこへ行くの? 我々には覚悟はあるか(11)~滅び行く金融機関 再編の果てに(後)
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山口フィナンシャルグループ社長・山口銀行頭取を兼ねている吉村猛氏の取材を通じ、同氏の危機把握と打開策聞いて感服した。すぐさまファンになった。取材の冒頭で、「経営統合して規模拡大しても現在の金融機関の経営危機の打開はできない」と断じたところから吉村社長には刮目させられた。「お客に新しいビジネスを提供できないとわがグループの存続も危うい」と喝破したので「これは従来の経営者でないな」と尊敬の念を抱き始めたのである。
そこで意地悪な質問を投げかけた。「ところでビジネスモデルの構築のタイムリミットはいつまでですか?」と。平然と「1年」と力強い返答。「2018年3月ですか」。「そういうところだ。いいですか!!我々のライバルはもう同業者だけではないんだ。異業種=ITテクノロジーとの戦いが本命になる。彼らに立ち向かうにはスピードが要求される。ここを徹底的に学ぶことが緊要な課題である」と持論を展開していく過程で吉村頭取の手を強く握り締めたくなった。完全に尊敬の対象者になった。ファンとなったのである。
従来の金融機関の経営者は、行政指導に対してはへこへこする。お客(貸出先)には「貸してやる」という高飛車な姿勢を保つという習性であった。この悪しき習性を打破して「顧客本位の実現」を高らかに宣言する同頭取に対し、一肌脱ぐことを決断するのは当然だ。「福岡地区で山口フィナンシャルグループのためにお手伝いしたい」と決意した。
プライド高いだけが、特技
7月25日のことである。8月1日の芝浦グループ新社長就任パーティに向けた取材に出掛けた。新地会長との雑談の中で「出席者には沢山の銀行がやってくる」と耳にした。そこで当然のごとく「北九銀行さんも出るのでしょう?」と尋ねた。ところが、「呼んでいない」と返事である。「以前は取引があったはずであるが、何か支障があったのかな」と想像を巡らしながら「これは山口フィナンシャルグループにとって都合が悪くなるな」と直感した。
「疎遠な状態であれば都合が悪くなる」という意味は、芝浦グループの4大プロジェクトに関することである。その一つが山口県山陽小野田市厚狭に77メガの大型メガソーラーを建設する案件だ。70億円前後の事業規模になる。予定では2020年4月には竣工とか。吉村頭取のファンの一人として、強い焦燥感を抱いた。「山口銀行のお膝元で行われるビックプロジェクトの竣工式に、山陽小野田市市長が臨席されて吉村頭取が呼ばれない事態になるとなればこれは大きな恥をかくことになる」と非常事態を想定した。
まず早急になすべきことは北九州銀行福岡支店長、山本道也専務に面談することである。専務格は同行本部で統括している藤田頭取に次ぐ、同行の二番手なのである。7月31日15時に北九州銀行福岡支店を訪問した。山本専務には上記してきた筆者の気持ち・役割を伝えた。8月1日のパーティ席での金融機関の参加状況も説明したうえである。
そこで至急の要件を伝達したのだ。「早速ですが、芝浦さんとの取引が中断しているようですが、新地会長とのアポイントをとりましょうか?」と申し出したところ「いらぬ御節介をするな」と傲慢な対応をするのです。「ああー、プライド高いだけが何も取り柄のない専務だな。ただ昔の、『貸してやる』という金融機関の古き良き時代から脱皮できない恐竜に過ぎないか」と憐れみすら感じた。内向き志向で自分の保身しか関心がないのである。
内向き志向優先であれば、吉村頭取の組織改革・変革案を真剣に学べば良いのに、それすら関心がないのかしら。これでは同頭取に後ろから鉄砲を撃つ存在に等しい。前回は金融機関の取り巻く厳しい環境=「何処で儲けるのか!!」の核心に触れたつもりである。吉村頭取も組織内には優秀な若手の人材を活用して組織活性化を断行することにも手をつけないと、内部から結果的には妨害を浴びることになるであろう。
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