ソフトバンクの孫氏と楽天の三木谷氏のスポーツ投資の違い(後)
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ヨットの世界最高峰レース「第35回アメリカズカップ」が2017年6月に英領バミューダで開催された。その予選となる「ルイ・ヴィトン・アメリカズカップ・ワールドシリーズ」第9戦が2016年11月18~20日に福岡市中央区の地行浜で行なわれた。
アジア地区で予選が開催されるのは、1851年の第1回以降初の快挙。ソフトバンク・チーム・ジャパンが、日本チームとしては2000年以来、16年ぶりに参戦した。
日本は四方を海に囲まれた海洋国ながらセーリング人気はあまり高くない。福岡大会は日本セーリング史に残る記念レースとなった。地元のテレビ局は、各チームが艇体を浮かせて帆走するド迫力の映像を放映し、セーリングになじみのないスポーツファンを魅了した。 最高速度は時速60キロを超える。セーリングが「飛ぶヨット」だということを初めて知った人が多かったのではないか。
航空機大手の仏エアバス社がソフトバンク・チームに技術を提供した。ヨットの設計と航空機の設計には共通点がある。どちらも重量や空力技術、コントロール、操縦性において最先端技術を追求して開発される。巨額の投資が求められるだけに、アメリカズカップは「海のF1」と呼ばれている。
ソフトバンク・チーム・ジャパンは2015年4月、関西ヨットクラブの協力のもと、2017年アメリカズカップ挑戦のために結成された。
孫正義氏はアメリカズカップについて、「日本はまだ1度も、トロフィーを手にしていません。米国がずっと続けてきたトロフィーをアジアで初めて日本が奪いとっていただきたいと思います」(日刊スポーツ16年6月3日号)と語っている。
15年5月、孫正義氏が後継者として招かれたニケシュ・アローラ氏がソフトバンク副社長に就任した。だが1年後、両氏は決別する。アローラ氏が孫氏の投資手法を「趣味的」と批判したことが一因。「趣味的」な最たるものがアメリカズカップへの投資だったといえる。
孫氏は未知の分野への挑戦に燃える。アメリカズカップは、誰も手掛けない分野への挑戦であった。通算成績は6位中5位に終わったが、まだまだ挑戦は続くのか。8月7日の決算説明会で、アメリカズカップへの挑戦について問われた孫氏はこう答えている。
〈やってよかったのではないかと思います。やはりスポーツは、多くの人々にとって関心の高いものですから、我々のプランティングにも貢献したのではないかと思います。次回大会については、その成果を我々がかける費用などと照らし合わせて、どうするか、これから話しあうところです。〉
「海のF1」であるアメリカズカップで、是非とも、王座を奪い取って欲しい。それができるのは、孫正義氏以外にいないからである。
(了)
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