日本の製造業の信頼が根底から崩れていく~神戸製鋼の不正は底なし(前)
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神戸製鋼所のデータ改ざんは、底なしの様相だ。アルミ・銅製部材の検査データの改ざんで始まった不正は、主力の鉄鋼製品までおよんでいた。不正が見つかった生産拠点は海外に広がり、問題製品の出荷先は500社に膨らんだ。神鋼の信頼度はゼロに落ちた。より深刻なのは、供給先の自動車、航空機、鉄道、防衛産業の製品を含めて「メイド・イン・ジャパン」の信頼が傷付いたことだ。
メイド・イン・ジャパンの信頼が失われた
国内のモノづくりの現場では、品質管理などでの不祥事が相次いでいた。
タカタのエアバッグの破裂事故、東洋ゴム工業の免震ゴムの性能データの偽装、旭化成子会社の杭打ちデータ改ざん、三菱自動車の軽自動車の燃費データ改ざん、スズキの燃費データ不正測定、日産自動車の無資格従業員による完成検査と書類偽装。そして神戸製鋼所の性能データの改ざん。モノづくり王国の崩壊はとどまることを知らない。
米紙ニューヨーク・タイムズは10月11日付紙面の1面トップで「日本のイメージに打撃」との見出しで、神鋼問題を報道した。日本のメディアが米国発のニュースで伝えた。「日本は、安価な製品を供給する中国などに勝る強みとして、品質に頼ってきた」と強調し、今回の不祥事が「日本の急所を突いた」と指摘したという。神鋼だけにとどまらず、メイド・イン・ジャパンの品質への信頼が損なわれてきたと警鐘を鳴らしているのである。
なぜ、モノ作りの現場で、モラルが低下したのか。ホンダの創業者、本田宗一郎氏が語るモノづくの要諦
ホンダの創業者、本田宗一郎氏はモノ作りの達人である。製品を買ってくれるユーザーのことを第一に考えた技術者社長だった。世上、ゲンコツ社長として名をとどめている。
いくら設備が良くてもミスは避けられない。そこで宗一郎氏は「120%の良品を目指せ」とパッパをかけた。1%の不良品もユーザーに渡すなという意味だ。ホンダがつくっているものがクルマやバイクなど交通に関するものである以上、ネジ1本、ナットひとつにしても、お客の生命にかかわる。たとえ、1パーセントの不良であっても、それを買ったお客にしてみれば、100パーセントの不良だ。
だから、社員が生半可な製品をこしらえているのを見つけるや、「おまえ、お客を殺す気か」とカミナリを落とした。どなり声とともに、容赦なく手が飛んだ。ゲンコツを見舞われなかったホンダの社員はいないと言われている。それほど、品質には厳しかった。
しかし晩年は、その品質を維持することは難しいと考えていたようだ。
宗一郎氏が他界後、モノづくりの盟友、ソニーの創業者、井深大氏は『わが友本田宗一郎』(文春文庫)を著わした。2人の最後の対話が載っている。宗一郎氏はモノづくりの要諦を、こう言い切る。
「何千でもいいから、お釈迦になってもいいから、作ることだね。もったいないようだけど、捨てることが、一番の巧妙な方法だね。捨てることを惜しんでいる奴は、いつまで経ってもできないね。物を苦労して作った奴ほど強い奴はないね。物を作ったことがない奴は、皆だめだね」
(つづく)
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