2024年12月25日( 水 )

銀行大リストラ時代 中小企業は貸し渋りに備えよ!(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 一つの妖怪が日本にあらわれている。フィンテックという妖怪が-。マルクスの「共産党宣言」の書き出しをもじれば、こうなる。フィンテックとは「finance(金融)」と「technology(技術)」を合わせた造語。世界的に普及したスマートフォンのインフラやビックデータ、人工知能(AI)などの最新技術を駆使した金融サービスを指す。フィンテックがメガバンクの大リストラを引き起こした。この動きは今後、地銀・信金・信組に波及する。中小企業向け融資はどう変わるか。

メガバンクはIT化で3.2万人分の業務を削減

 メガバンクが大リストラ時代に突入した。人工知能(AI)やロボットを活用することで、3万2,000人分に上る業務量を減らす。
 最大手の三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)は、今後3年でIT化による業務の見直しを進めて、国内従業員約3万人の3割にあたる9,500人分の業務を削減する。三菱東京UFJ銀行の約480店のうち2割程度を統廃合する。
 みずほフィナンシャルグループ(FG)は、今後10年で従業員6万人の3割にあたる1万9,000人の業務を減らす。全国約800店の機能を見直し、20~30店を統廃合する。事務部門を効率化して営業部門に再配置する。
 三井住友銀行も、業務の効率化で、今後3年で4,000人分の業務量を減らす。

 ここ数年、2つの波が銀行業界に押し寄せてきた。その波とは、低金利とフィンテックである。第1波は日銀のマイナス金利政策。銀行は融資業務で利ザヤ(預金金利と貸出金利の差)を稼ぐことが難しくなった。第2波がフィンテックの進展である。
 日本の銀行は、この2つの大波に押し流された。支店で預金を集め、それを貸出や有価証券の運用に回すという商業銀行モデルは構造不況化した。徹底的なデジタル技術の活用による効率化を柱としたモデルに転換する。かくして、メガバンクは大リストラに走り出した。

内勤事務の仕事をコンピュータが奪う

 それでは、どういった職種がリストラの対象になるのか。これまで人の手によって行われてきた業務が、コンピュータに置き換えられていく。

 オックスフォード大学が90%の確率で10年後に消える仕事を発表したなかに銀行の窓口係があった。すでに銀行の窓口に行列ができるほどの混雑はなくなっている。現金の出し入れは、銀行でなくても、コンビニやスーパーでも引き出せる。キャッシュレスで決済するケースも増えている。現金を扱わなくなれば、各地に支店をつくり、何台ものATMを置いておく必要もなくなる。若い女性の花形ポストだった窓口担当の仕事は消えていく。
 内勤の仕事も奪われる。内勤は振り込みや納税、伝票の確認に当たっている。営業マンが顧客から貰ってきた契約書などの書類の内容に誤りがないかをチェックしてきた。このチェックを経ないと、上司に書類が渡らず、決済ができない仕組みだった。
 今は、書類は電子化され、手書きの書類がなくなった。営業マンは各自にタブレット端末を支給され、そこに必要事項を打ち込んでいく。コンピュータが入力ミスを指摘して、その場で完璧な書類ができあがる。それを上司に転送する。電子化されたデータはセンターに集約される。かつて重要視されてきた事務の仕事は、IT化によって必要がなくなる。
 今後の銀行のビジネスは事務作業の大半が人ではなく、IT化されたシステムによって遂行されていく。本部やバックオフィス(事務やシステム部門)の必要性は低下する。

(つづく)

 
(後)

関連記事