ユニクロ柳井氏、日本電産永守氏の「引き際」(前)
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リーダーは退き際を潔くしなければならない。「引き際の美学」として唱えられるフレーズだが、実行はなかなか難しい。成功したリーダーほど至難の業だ。優れた実業家が、この1点で、晩節を汚すどころか、若き日の高名をまったく無にしまうことが往々にある。オーナー経営者の引き際について考えてみよう。
柳井氏は70歳、永守氏は75歳で社長交代する
著名な2人の実業家の社長交代発言の記事を目にした。
1人は「ユニクロ王国」を築いた(株)ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長(68)。
〈70歳となる2年後をメドに社長職を譲る。会長職に専念し、経営を監督する立場で会社に関わり続ける。新社長は外部から招くのではなく、執行役員など内部から選ぶ〉(日本経済新聞電子版10月21日付)
もう1人は「買収王」の異名をとる、超小型精密モーターで世界トップシェアを誇る日本電産(株)の永守重信会長兼社長(73)。
〈75歳までに社長職を譲り、会長職に専念する。後任社長は実績主義で決める〉(日本経済新聞電子版11月25日付)
期せずして、当代きっての花形実業家が相次いで社長交代を口にした。
柳井正氏の社長引退宣言は今回が初めてではない。かねてから「65歳での社長引退」を公言していた。ところが、65歳を目前にした13年10月、公約の65歳引退を撤回した。今回も、70歳になったら、社長続投宣言するのではないか、と見る向きがほとんどだ。
柳井氏が掲げる後継者の条件は、現在2兆円の売上高を5兆円に引き上げる力仕事ができる人だ。
一方、永守氏は、常々、「私の楽しみは会社を大きく強くしていくこと」と公言。現在1兆円強の売上高を30年に10兆円にしたい。そのために、後継者は儲けることができる人を絶対条件に上げる。どちらも後継者の条件のハードルは高い。世襲に対する考え方の相異
それでは、2人は世襲をどう考えているのだろうか。
柳井氏の2人の息子は、ファーストリの執行役員だ。長男の柳井一海氏(43)は、ボストン大学院でMBA(経営学修士)を取得後、投資銀行大手のゴールドマン・サックスに入社。花形の投資銀行部門で働いたのち、ファーストリが買収したリンク・セオリーに入社。米国の高級婦人服ブランドだ。女優・萬田久子氏の内縁の夫・佐々木力社長が死去したのち、一海氏は(株)リンク・セオリー・ジャパンの会長に就いた。
次男の柳井康治氏(40)は、横浜市立大学卒業後、三菱商事(株)に入社。英国駐在を経て、ファーストリに入社。グローバルコミュニケーション部に配属になった。
柳井正氏は、実子を社長候補としてかねてから否定。大株主として経営の監視役にすると言っていた。だが、柳井氏のことだから、後継者に適した人がいないことを理由に、「後継者の世襲はあり得ない」の前言を翻して、息子を据えるという観測は消えない。
これに対して、永守氏は「世襲厳禁」を宣言して、2人の息子を会社に入れていない。それぞれ独自の道を歩んでいる。
長男の永守貴樹氏(46)は、関東学園大学卒業後、東海銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に入行。東証一部上場のバス・トイレ用品を製造するレック(株)に転職。現在、社長だ。
次男の永守知博氏(41)は、ベンチャー起業家である。明治大学大学院理工学研究科電気工学専攻終了後、富士通(株)に入社。独立して製造業向けポータルサイトを運営するエルステッドインターナショナル(株)を設立したが失敗。現在、ロボットベンチャー(株)MJIの代表取締役である。
柳井氏と永守氏の息子たちに対する姿勢は異なる。しかし、引退問題に対する考え方は共通している。柳井氏と永守氏の盟友であるソフトバンクグループ(株)の孫正義会長兼社長(60)は、後継者に指名していた副社長のニケシュ・アローラ氏への禅譲を撤回した。柳井氏と永守氏も同様。柳井氏、永守氏、孫氏とも「生涯現役」を貫くとみている。それが、創業者の業であるからだ。(つづく)
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