2024年12月23日( 月 )

支配・侵略の6000年の歴史の変遷~イタリア・シシリー島(2)

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女性パワーが圧倒するカップル

 友人たちに声をかけ、当初は9組の了解を得ていた。ところが、後になって断ってくる者が続出した。
 うち1人は、「ローマで2日間も無駄な時間は費やしたくない。ローマには飽きるほど行ったから」という理由だった。「そうならば早く断れ!!」と言いたくなる。
 12月半ばごろに引退した元経営者は、弊社に辞退の挨拶に来られた。「11月に肺炎になってしまったので、申し訳ないが今回は辞退する」との申し出だった。それは仕方がない。断り方1つとっても、その人のお人柄が表れるものだ。

 残りの2組は、奥さんの体調不調と、ツアー期間中に大きな契約が発生したというのが断りの理由だった。何事でも、他者に対しての企画催促を行えば、半分は断られるものだ。こちらとしては、「シシリー島のコバルト色の海岸の絶景を見せてやりたい」という誠実心で誘っただけである。ここは無心で対処するしかない。旅行を趣味にしている人にだけ声をかけないと、無駄になる。
 結局、ツアー参加者は5組10名となったが、ある意味、参加人数としてはこれくらいが理想の数なのかもしれない。

 1月に、シシリーレストランで決起食事会を決行。1組を除く4組のご夫婦が集合した。そのときにそれぞれの奥さんにもお会いしたが、そのときとツアー中とでは、印象がガラッと変わったご婦人たちであった。

 若宮氏は、経営には奥さんをタッチさせていない。若宮夫人は、まさしく飛んでいる人だ。海外を1人で旅行するのが趣味だという。その活動を支えている若宮氏はたいしたものである。今回のツアー期間中、若宮夫人の堪能な英会話力には大いに助けられた。

 名島氏のご夫婦は、今回のツアー参加者のなかで最も若い。まだ50代半ばである。夫婦で会社経営に携わっている。これまで一緒に旅行する機会がなかったので、今回の誘いに応じてくれた。名島氏は酒好きであり、酒・ワインの解説にはいつも感服することばかり。しかも食通であり、イタリアン料理にも堪能している。加えること、名島夫人はシャンソン歌手として社会貢献活動に励んでおられる。晩餐で披露していただいた独唱には、心を慰めていただいた。

 阿久根氏も「そろそろ現役を退こうか」と悩んでいる。これまで仕事一筋で、家庭を顧みずに独走してきた。そんな阿久根氏だが、「引退すれば、家内と向き合う時間が増える」と一抹の不安を覚えていた。「たまには奥さん孝行をしないと、そのうち捨てられるぞ」という脅しに屈して、奥さん同伴でのツアー参加となった。ツアー中、この夫婦のやりとりを眺めていたが、しっかりとした堅実な奥さんである。阿久根氏も心配することはない。奥さんから捨てられることはないであろう。

 もう1組は、金融機関を引退した増田氏である。現在、彼は金融アナリストとして活躍している。増田夫人とは金融機関で職場結婚した。この夫婦とは、これまでに何度も視察ツアーを体験しているから、すべて気心がわかっている。ツアー中、増田氏のところに、前職の元頭取が亡くなったという情報が飛び込んできた。そのためイタリアと日本との間で、情報交換に大わらわであった。

 総論として4組の婦人たちの共通点は、それぞれ旦那たちを上手に転がしていることだ。各々かたちは違うが、女性パワーが圧倒しているカップルであった。

気配りの旅行社

 旅行社オーナーの大原氏は、会社を起こして33年になる。茫洋としているなかにも、大人の風格を感じさせる。出身が京都・公家と聞く。彼がいつも大人の異彩を放つのは、中国人相手のときである。過去に10回ほど中国視察に同行した。大原氏が中国語を駆使する様に立ち会うと、中国共産党の要人かと錯覚する。応対する相手の中国人に最敬礼をさせるような迫力を与えるのである。

 今回、イタリアでのツアー経験がない旅行社に頼んだのだ。(1)意地悪根性の試し、(2)友人として多角化の経験を踏ませるため――という2点の動機があった。こちらからの要望は、(1)シシリー島の最高の海岸線を眺めること、(2)ワイン生産の農家での食事確保の2点であった。この要望に、旅行社の女性スタッフの佐賀さんが必死で計画案を練り上げてくれた。彼女はシシリー島に行った経験もないのに、最高のツアープログラムを提供してくれたのだ。
 ただ願わくは、ローマでの滞在時間を1日減らして、早々にシシリー島へと乗り込むスケジュールを求めたかった。ただ佐賀さんとしては、「ローマ訪問が初めて」という参加者への配慮のため、ローマ滞在2日間というスケジュールを組んだのであろう。茫洋としているオーナー・大原氏の下では、良い人材が育つ。佐賀さんもその1人だ。佐賀さん、本当にありがとう!!

 「今回のツアー添乗員は、外部の専門家に投げるのであろう」と、こちらは勝手に思い込んでいた。
 ところが昨年末、大原氏から申し出があった。「1月にドイツに行く予定がある。俺はローマを見たことがない。だから立ち寄って、2日間ほど観光でめぐってくる」というのだ。「馬鹿な!!そんなことはしなくとも結構。儲けがすっ飛ぶぞ!!」と反対した。だが結果として、大原氏はローマ視察を実行し、自らが添乗員役を買って出たのである。
 ツアー企画を実行する前には、さまざまなドラマと苦労があったのだ。

 添乗員・大原氏に引き連れられた5夫婦10名は2月20日、福岡空港を午前10時30分出発するKE788便で仁川空港へ向かい、仁川空港を午後3時10分発のKE931便でローマに向かった。現地時間で午後7時35分にローマ空港へ到着。所要時間12時間30分がかかるのだ。
 ローマ観光には1日半を費やしたが、コースは定番。22日はあいにくの雨で、どうにか寒さを凌いだ。ただ、ローマ観光は11月から3月までは閑散としており、この期間が穴場かもしれない。

 そして2月22日の現地時間午後6時、我々はようやくシシリー島のカターニア・ファンタナロッサ国際空港に到着したのである。

(つづく)

※登場人物名は仮名

 
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