大塚家具はなぜ事業承継に失敗したのか(前)
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中小企業の経営者の悩みは事業承継の問題である。後継者がいないため会社は自分の代で終わると考えている経営者が増えているが、それでも、子どもに継がせるのが主流であることには変わりない。事業承継は株式譲渡が普通のやり方だ。中小企業の場合、株式を100%譲渡するのが鉄則。それを間違えると、どうなるか。
「3年間、1株80円配当」の呪縛
大塚久美子社長(49)と父親である大塚勝久前社長(74)の骨肉の争いから3年――。大塚家具は正念場を迎えている。業績悪化に歯止めがかからないのだ。
2017年12月期の決算は、売上高が前期比11.3%減の410億円、営業損益は51億円の赤字(前期は45億円の赤字)、純損益は72億円の赤字(同45億円の赤字)だった。
期初の業績予想は、売上高が530億円、営業利益は5億円の黒字、純利益は3億円の黒字を見込み、過去最悪と言われた16年12月期決算からV字回復すると宣言した。だが蓋を開けてみると、過去最悪の2期連続の大赤字だ。
問題は現金および現金同等物(現預金)が激減していることだ。17年12月期末の残高は18億円。15年12月期末に109億円あった現預金が、わずか2年で18億円に減った。なぜか?大塚家具は3月26日、東京・有明で株主総会を開いた。週刊新潮ウェブ版「デイリー新潮」(18年4月5日付)が、株主総会をレポートしている。
久美子社長は就任時に「3年間、1株80円の配当を続ける」と株主に約束し、15年期と16年期は80円の配当を行なった。しかし、17年期は業績悪化にともない半額の40円の配当となった。総会では株主からこんな質問が出た、と報じた。〈株主:大塚家具の一番の問題は、キャッシュが減っていること。にも関わらず、これだけの配当をする必要があるのか。
社長:このたびの配当につきましては、今年度の業績の見通しをふまえて、資金面で問題はないと判断して、実行しております。
こう強がった久美子社長だが、出席した株主から言わせれば、
「今年度の業績見通しが良いのであれば、それは来期の配当に回すべき。配当しすぎたせいで会社が潰れてしまったら、元も子もありません」〉久美子社長は父親との委任状争奪戦の際、株主の支持を得るため「1株80円」の高配当を公約した。それを履行できないのであれば社長を辞めるのが筋だ。しかし、社長は辞めたくない。業績が最悪でも高配当を実施した。高配当が久美子氏を呪縛した。
配当金総額は15年期と16年期が14億円。2期合計で28億円。109億円あった現預金が18億円に激減した要因の1つだ。17年期の配当総額は7億円。それを支払うと現預金は11億円になる計算だ。資金が底をついてしまう。
株主は「配当金を引き上げろ」と迫るのが普通だが、大塚家具の株主は配当金の払いすぎで、会社が潰れることを心配している。けったいな会社だと言わざるをえない。株主総会があった3月26日、大塚家具の株価は597円と骨肉の争い以来の最安値を付けた。お家騒動の最中の15年3月3日の株価は2,488円。父親から社長の座を奪還した久美子社長に対する期待から10年来の高値を更新した。しかし、今や4分の1以上落ち込んだ。市場が久美子社長の経営手腕にサジを投げていることを示している。
(つづく)
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