スルガ銀行、シェアハウス「かぼちゃの馬車」の詐欺事件に役員が片棒担ぐ(後)
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個人向け融資特化型にビジネスモデルを転換
スルガ銀行は、地銀のなかでは絶滅危惧種といえる同族経営の銀行だ。岡野一族の同族経営で、5代目の岡野光喜氏が会長兼CEO(最高経営責任者)として君臨している。
岡野光喜氏は1985年、40歳の若さで家業であるスルガ銀行の経営を引き継いだ。当時は法人貸付が全盛の時代である。スルガ銀行は東に横浜銀行、西に静岡銀行という巨大地銀に挟まれている。生き残るためには独自の営業戦略が必要になるため、法人向け融資から個人融資特化型へとビジネスモデルを転換した。
岡野氏はスルガ銀行を「コンシェルジュバンク」と名付けた。コンシェルジュとはフランス語で高級ホテルの有名レストランなどの予約を手配してくれる専門職を示す。銀行を訪れる人に娘の結婚資金、子どもの入学資金、マイホームの建築資金などの相談にのるポストだ。洒落た言葉を散りばめたコンシェルジュバンクは、「ボンボンの道楽」と見られていたが大化けする。
ゼロ金利時代の到来で、個人へのビジネスモデルの転換が全面開花した。近年は軸足を「パーソナルローン」に移行。投資用不動産への融資とカードローンで構成される。
個人向け融資の残高は飛躍的に増加した。2017年9月期末時点の貸出金は3兆2,860億円。うち個人ローンは2兆9,634億円。個人ローン比率は実に90.1%に達する。ゼロ金利で、地銀の貸出金利の利回りが平均1.2%まで落ちるなか、スルガ銀行は3.58%まで伸ばし、その差を2ポイント以上に広げた。高収益を上げている要因だ。
そのビジネスモデルの象徴がシェアハウス融資だ。スルガ銀行は1棟で1億円前後する土地・建物の資金を約700人の投資家に融資。融資額は1,000億円規模に上るとされる。
シェアハウスのオーナーたちのほとんどは、スルガ銀行横浜東口支店から使途自由の「フリーローン」を借りていた。年利は7.5%程度と高い。スルガ銀行にはおいしい融資だ。一時は、ハイリターンでボロ儲けした。いわば「銀行のサラ金化」で稼いできたのである。
しかし、シェアハウス融資が破綻。スルガ銀行の一部役員が主導するかたちで、投資家の年収を証明したり、預貯金の残高を示したりする審査書類を改ざんするなどの行為に関与した疑いが持たれている。
組織ぐるみの不正と認定されれば、刑事事件として逮捕者が出る。シェアハウスのオーナーからは損害賠償を求められる。1,000億円のシェアハウスの融資のほとんどが焦げ付く。
個人向けに特化したビジネスモデルが崩壊に直面。スルガ銀行は創業以来、最大の危機を迎えた。最高実力者である岡野光喜氏は引責辞任し、スルガ銀行の同族経営は終わるだろう。そして、スルガ銀行を「地銀のモデル銀行」と持ち上げた金融庁の森信親長官も責任を問われることになる。
(了)
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