2024年11月26日( 火 )

【巨大地震に備える(6)】地形による運不運

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 今回の現地視察では静岡県全域の海岸線を視察することは時間的に不可能で、伊豆半島を含む東部地区は視察できなかった。
 静岡県の海岸線の地図を下記に添付する。この地図を参考にしながら説明をすると浜名湖河口から浜松、御前崎、焼津、静岡、清水と西から東へと移動した。
 その結果、地の利によって運不運が分かれるという結論に至った。浜松市は大澄賢次郎氏の貢献で被害を最小限に食い止められるだろうが――。

物流がストップする事態

 西から順番に説明していこう。前項で指摘した通り、南海トラフ地震があると浜名湖河口に大波が押し寄せ、物流の大動脈が寸前される程度では済まない事態に陥る。仮に応急処置をしたとしても1年程度の復旧は困難だと判断され、日本経済に大打撃を与えるだろう。

 今からでも遅くはない。災害時でも東京~大阪間の物流を維持すべくリスクヘッジすることが求められる。そのために物流の大動脈を複数構築し、それを整備していかなければならないだろう。

 浜名湖から浜松市の天竜川河口までは大澄賢次郎氏の堤防で多少の時間稼ぎができるから被害を最小限に食い止められるだろう。

 天竜川を横切り、御前崎市までの海岸線を東南東に走行した。磐田市・袋井市・掛川市などは大半が高台に位置しているが、海岸線沿いの居住者には避難対策を講じる必要があるだろう。「地形の運不運」は同じ市に住む人でも、どの場所に住んでいるかで決定的な差が生じる。

 浜松市から御前崎市までは台地が海岸線近くまでせり出している。この高台には牧之原市などがあり静岡茶の名産地になっている。牧之原市には静岡空港があるが、高台に位置しているため高波に襲われる心配はないだろう。

 ただ御前崎市に来て危機感を抱いた。この市は港町である。工業港の色彩が強く、労働者数が多い。急遽、避難できるかが懸念される。残念ながら御前崎市は「地形の運不運」という観点でみると「不運」の方に該当するのかもしれない。

不運さが続く、焼津・静岡・清水

 御前崎市から車は北東へと向かう。牧之原市、吉田町を通過すると平地が増えてくる。駿河湾に位置するのだが、この辺りは不運さに泣く地域になってしまうだろう。

 焼津港に到着した。焼津港はマグロの水揚げ日本一の港だ。着いたときはちょうど関係者がたくさん集まり、無事を祈って船を送り出すところだった。その日は日曜日ということもあり、数多くの市民・観光客が魚を買いにきていた。焼津も「不運な地形」のせいで、南海トラフ地震があると多くの被害が出るだろう。その後、清水港へと向かう。静岡の海岸は総じて、まるで無防備だと感じた。

 日本平に登った。当日は天気が良く、富士山のすばらしい姿をおがむことができた。私は「富士山はいつまでも休火山でいてください」と心のなかで真剣にお願いした。万が一、南海トラフ地震と富士山の爆発が同時期に起こるようなことになれば日本は存亡の危機に瀕してしまうだろう。

 お恥ずかしい話、三保の松原が岬になっていることを知らなかった。松の群生は本当に凄い。約7kmの海岸線沿いに3万本以上の松が茂り、日本三大松原の1つに数えられている。

 観光客も時間が経つにつれ増える一方だ。天女が舞い降りたという伝説が残る所以も現地に立ったことで理解できた。なにより富士山の光景に感激した。しかし、巨大地震のことを考えると気持ちは滅入るばかりだ。「この三保の松原も一瞬にして波に飲み込まれてしまうのか!!」とため息をつくしかない。

 ここは「清水港の次郎長は!!」と気張りたいところだが、清水港に立ってみると「やはり、この地域は運にめぐまれていない」という結論に至らざるを得なかった。

(つづく)

 
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