2024年12月29日( 日 )

出光興産と昭和シェルの経営統合~出光創業家の功罪を問う(前)

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創業家は、株主総会で経営陣への反対票を投じず

 出光興産と昭和シェル石油は2015年7月に経営統合に合意。17年4月の統合を目指していた。しかし、16年6月の出光の株主総会で、創業家側が「企業文化の違い」などを理由に反対票を投じて経営側と対立。経営統合は無期延期となった。
 その膠着状態を打ち破るべく登場したのが、“物言う株主”として知られる旧村上ファンド代表で投資家の村上世彰氏だ。村上氏は朝日新聞(18年6月28日付朝刊)のインタビューで以下のように答えている。

※画像はイメージです

 (村上氏は)昭和シェル石油との経営統合を目指す出光興産の経営陣と出光創業家の間に入り、交渉の助言をしてきたことを明らかにした。「統合には賛成」の立場という。
 村上氏は昨秋ごろ、創業家に近い人物から創業家への助言を依頼されたという。「創業家の理念と会社側の考え方に乖離があることは、上場企業としてふさわしくないと考え、何か力になれることがないかと考えた」ことから、交渉への助言を始めたという。
 同紙によると、創業家側は、昭和シェルとの合併に反対するとともに、昭介氏の長男らを統合新会社の役員にすることなどを要求。経営陣がこうした要求を一定程度のんだことで、動き出し、創業家の態度が軟化した―と伝えた。

 6月28日に開かれた出光興産の株主総会で、昭和シェル石油との統合を主導してきた月岡隆会長の取締役選任議案への賛成率は96.1%。前年は創業家の反対で61.1%だったが、大幅に上がった。今年は創業家が議決権を行使しなかったことで、賛成率が高まった。和解の意思表示だ。

松下電器の場合

 出光創業家と経営陣の泥沼対立は、「創業家はどこまで経営に関与してよいか」という深刻な問題を投げかけた。創業者が一代でビックビジネスにつくり上げた企業が、子、孫の世代になると、否応なしに直面する難問だ。出光の問題は、パナソニック(旧・松下電器産業)の創業家である松下家と事情が似ている。

 “経営の神様”と呼ばれた松下幸之助氏は1989年4月27日、94歳で亡くなった。幸之助氏が亡くなると、松下家は、一族の総領となった幸之助氏の娘婿である正治氏を先頭に立て、正治氏の長男・正幸氏を社長に擁立しようとした。
 ここでいう松下家とは、幸之助氏の1人娘の幸子さん。正治氏を婿に迎えた。息子の正幸氏を社長に就けることを非願とした。しかし、経営陣にとって、松下電器はれっきとした上場会社で、松下家の個人商店ではない。経営陣の最大の課題は、松下家の世襲を阻止することにあった。
 この暗闘に終止符を打ったのは、松下家の資産管理会社、松下興産の経営危機だ。バブル期に過大なリゾート投資で有利子負債を1兆円に膨らませた。松下家のファミリー企業なので、松下電器は捨て置くことはできない。松下電器主導で松下興産は清算された。
 正治氏というより幸之助氏の娘、幸子さんがあれほど執念を燃やした正幸氏の社長就任を断念したのは松下興産を救済してもらったからだ。
 後にパナソニックは正幸氏を取締役に迎えた。正幸氏は経営にタッチせず、副会長として財界活動に携っている。創業家を処遇する1つの回答であろう。

(つづく)

 
(後)

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