マンション管理トラブル~A氏を襲った建物明け渡し請求(前)
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公益財団法人マンション管理センターへのマンション管理に関する相談件数は、年間8,000件以上(2014年)にのぼり、マンションをめぐるトラブルは絶えない。管理組合が共用部分を賃貸した相手に建物明渡などを求める訴訟を起こし、敗訴する判決が福岡地裁であった。管理組合側は、判決を不服として控訴した。マンショントラブルの断面を探った。
管理費滞納や所有者不存在で裁判に至るケースも
分譲マンションの新規供給戸数は、最盛期の約半分の十数万戸だが、ストック数は600万戸を超し、国民の約1割がマンションに住む。マンション生活のトラブルは、生活音やペット飼育、管理費などの滞納、エレベーターの既存不適格による修繕積立金の不足など、多方面にわたる。
一方、高齢化が進展し、管理組合総会の区分所有者の出席率(委任状などを除く)は約35%(国交省2013年度マンション総合調査)で、マンションには住居専用型もあれば住居・店舗複合型もあり、賃貸化率も約3割にのぼり、権利関係も複雑だ。組合役員は、役割も重く、頭を悩ませる。
トラブル解決のための対処方法は、管理業者に相談したり、当事者同士・理事会等で協議したり、さまざまある。裁判で解決しようと思えば、弁護士費用だけでも場合によっては数十万から数百万円にのぼり、費用対効果も検討しなければいけない。管理費の多額の滞納や、施工不良をめぐる紛争など、裁判に至ったケースもあるが、福岡市の調査では、民事訴訟の利用・訴訟提起は3%にも満たない。
「福岡県マンション管理組合連合会」によれば、裁判や法的手続きを利用する最近の紛争事例の特徴は、管理費の滞納と、区分所有者の死亡などによる不存在を挙げる。また、理事による横領、使い込みもあるが、話し合いで解決するケースが多いという。修繕積立金を分配した決議が無効とされた裁判例もあり、そこでは今後、分配したお金をどう回収するのかが課題になっていると指摘する。管理組合の運営や費用負担には、民主的運営が欠かせない。10年経って突然の内容証明
冒頭紹介した建物明渡請求事件は、次のような紛争だ。
福岡市のキャナルシティに近いある14階建てマンション1階エントランス部分(共用部分)の一部分で、管理組合と05年12月に賃貸借契約を結んだA氏が小さな店舗(6.6坪)を営んでいたところ、契約から10年近くが過ぎた14年11月、「管理組合から委任を受けた弁護士」から「御通知」という名の内容証明郵便が届き、契約には重大な違法があるとして、差出日からわずか1週間以内の退去を求められたのだ。
要求はそれだけではない。「御通知」は、賃料が相場より7万円余も安く、管理組合は770万円余の損害を被ったとか、水道光熱費の支払いがされていないようだとして214万円を支払う必要があるなどとして、合計984万円余を請求していた。(つづく)
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