2024年12月22日( 日 )

問われる長崎県宅建協会の『公』(1)

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 32年間、勤務したベテラン女性職員A氏に対し、定年退職時の約36%の賃金という再雇用の条件を突き付け、労使問題に発展した公益社団法人長崎県宅地建物取引業協会(以下、長崎県宅建協会)。これまでのA氏の同協会への貢献を評価する理事も少なくはなく、理事会を通さない常任理事会のやり方を「私物化」と指摘する声もあがっている。同協会関係者への取材のなかで、A氏への同協会の対応が、決定機関である理事会を挟まずに続けられていたことがわかった。

会長も知らない弁護士の暴走?

office13 弁護士や労働組合に相談し、長崎県宅建協会へ対応することにしたA氏。今年(2015年)1月20日が定年退職から1年目の再雇用契約の期限であったが、21日、労働組合の職員とともに出勤した。するとその翌日(22日)、同協会の代理人を名乗る弁護士事務所から労働組合に文書が届けられた。その内容は、労働契約が切れているため、出勤を差し控えるよう求めたもので、それでもA氏が出勤した場合、「同協会として法的措置をとることも検討せざるを得ない」などとしていた。

 ところが、この文書について、理事の1人が理事会で確認したところ、会長はこの弁護士の対応について「知らない」という。当然ながら、理事会で決まったことでもない。この弁護士事務所は、同協会の顧問を長年務めてきたところだが、A氏への対応の依頼については、2月27日の理事会まで諮られていなかった。理事会の依頼を受けていない弁護士が同協会の名前をかたり、労使問題に踏み込むことは考えられない。かくして、『謎の文書』は物議を醸すことになった。なお、A氏の同協会への立ち入りを禁止する通知は、2月19日付で会長名でも出された。

 「賃金額の改定 原則として行わない」と定めた、長崎県宅建協会の定年後継続雇用規程。A氏の契約更新は、この規程に反する可能性があり、理事会の承認なくできるものではない。その変更が原因でトラブルが起き、法律家への依頼が必要になった際、その費用を誰が負担するのか。同協会は、加盟する約900社の入会金90万円、年会費5万円などで運営されている。また、税制上の優遇措置(原則非課税、公益目的事業以外は課税)を受ける公益社団法人は、間接的に国民の血税が投入されている。

 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律では、「遊休資産が一事業年度の事業費を超えてはならない」「公益目的事業は全体の事業の50%以上でなければならず、収支は黒字になってはならない」などと定められている。長崎県宅建協会もまた、公益社団法人である以上、公益に資することが厳しく求められている存在であり、民間の企業以上に、法令遵守(コンプライアンス)や品行方正であることが求められている。

無関心が招く権限の私物化

 A氏の再雇用をめぐる問題を知った同協会会員の1人は、「会員の無関心が無責任体質を生み出しているのではないか」と語る。背景には、18名の理事のうち、半数の9名が選挙をせずに選ばれているという実態がある。そのなかには、20年近く理事を務めている者が数名。会長は理事による選挙で選ばれるが、直接的に一般会員の意思とは関係なく、長期政権をつくりやすい状況にある。「現在の理事会には、ビジョンを示さないまま、規程をいじろうという姿勢がうかがえる」と、ある会員は警鐘を鳴らす。取材を進めていくと、A氏の問題とは別に、『権限の私物化』とも言える事象が浮かび上がってきた。

(つづく)
【山下 康太】

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