~公約の検証~ マニフェストで見る吉田市政 その3
◆「ビジョン」崩壊
吉田市政1年の節目、福岡市によるマニフェスト達成状況も公表されるようだが、もともと吉田市長のマニフェストは不勉強な中で作成されたものとしか思えない。
人工島以上に重要な課題である財政再建にしても、選挙当時に吉田市長が印刷物などで発信した財政に関する情報は、正確さを欠いていた。
福岡市の借金を2兆7千億円とし、山崎市政における市債残高の増加額を5,000億円としていたが、実際は4,400億円だったと就任後になって回答している。(市民団体の公開質問に答えて)
吉田候補支援のための民主党のチラシには、山崎市政下での借金増加額は、3,345億円と記されており、陣営としての数字にも整合性がなかった。
また、マニフェストには記されていないが、マニフェストを公表した公開討論会では、具体的な財政再建策について問われ「中小企業振興と観光事業の振興」と答え、会場の失笑を買った。経済活性化→税源確保→健全財政の確立と言いたいのだろうが、風が吹けば桶屋が儲かる式で、2兆7千億円以上に膨らんだ借金財政の再建ができるとは思えない。
最近になって財政再建への具体策が提示され始めたが、山崎市長時代と比べ、目を見張るような計画はない。
その他マニフェストに記された内容は様々なのだが、数値目標を掲げたものを含め、実現性どころか、「例えとして示した」ものや、「1つの提案」「アイディアの提案」であったものばかりが目立つ。
これが本当に「マニフェスト」と呼べるのか、いささか心配になってくる。良く言えば希望的観測を含めた「こうしてみたい集」、悪く言えば付け焼刃の人気取りということになるだろう。
「政治家としての信念」がまるで見えてこない。なぜ吉田市長のマニフェストに政治家の信念が見えてこないのか?
それは、吉田市長が、もともと福岡市長ではなく、北九州市長を目指していたことにも起因するのだろうし(つまり福岡市への愛着の問題)、何の為に市長を目指すのかという確固とした「志操」がなかったせいではないだろか。
市長就任からしばらくした頃、吉田市長自身が酒席で「市長がこんなにつまらないものとは思わなかった」とつぶやいたとの話が囁かれた。真偽のほどは分からないが、そうした噂が出ること自体、これまでの市役所にはなかったことである。
ズバリ言うが、吉田市長には福岡市の未来について「ビジョン」がない。
マニフェストに記された吉田候補の「ビジョン」を見ると、耳ざわりのいい言葉と施策の羅列に過ぎない。念のため、その部分だけご覧いただきたい。
【マニフェスト】
https://www.data-max.co.jp/shisei/2007/11/mail11-30/s-11-30_01.htm
https://www.data-max.co.jp/shisei/2007/11/mail11-30/s-11-30_02.htm
魂のこもった「ビジョン」と思われる方は少ないのではないだろうか。
その証拠に、人工島の検証・検討の過程は議事録もなく、市民の総意などお構いなしに、利用者無視の「こども病院単独移転」や、目途の立たない「商業・娯楽ゾーンの設置」など、正気の沙汰とは思えない結論を出している。
もっとも肝心なはずの吉田市長の「ビジョン」が、すでに崩壊しているということがご理解いただけただろう。この時点で、公約違反ということなのである。
就任以来、何もかも先送りして来たため、吉田市長に対する市民の評価は日増しに下がっている。もっとも、命がけで守るほどの内容があるマニフェストではないことも明らかなのだが・・・。
羅針盤のない船はいずれ沈む。
つづく