~公約の検証~ マニフェストで見る吉田市政 その2
◆留守家庭子ども会に結論か
人工島に次いで、吉田市長がすぐに行う重要施策としていたのは、地域自治のあり方の見直し策だった。
現行の自治協議会制度での不備を補う為、解決策として行政と地域を結ぶ特別職の公務員「コミュニティ推進員(仮称)」を提案するとしている。
自治協議会活動へのボランティア参加者からの不満や、民生委員等の情報が、制度上、自治組織に流すことができない現状の解決策を提示しようとしたのだろうが、これは廃止された「町世話人制度」を名前を変えて復活させるだけのことだろう。
もともと自治とは、地域住民が固有の意思で物事を決し、運営するということだ。自治体が金を出し、体裁だけを整えても本当の「自治」は育たない。
山崎前市政下で、半世紀にもわたった町世話人制度を廃止し、大きく変わった福岡市の自治組織のあり方は、確かに混乱を招いた。しかし、方向性は間違っていなかった。
役所と自治組織の間に、特別職とはいえ「公務員」が入ることで、「官」による地域のコントロールが生まれることを福岡市の自治会関係者は身をもって体験してきた。
便利な一面もあったが、一方なんでもかんでも「役所に頼る」体質を産みだしたことも事実である。
本当の自治を育てるためには、自治を担う「人づくり」が最優先課題である。同時に住民意識の高揚が不可欠となる。どうも吉田市長は自治の本質について真剣に考えたことがなかったのではないだろうか。
「コミュニティ推進員」は、福岡市の自治の現状を外形だけ捉えて、職を奪われた元町世話人の票を狙ったものとしか思えないし、この施策を、すぐにやるべき重要課題の二番目に持ってきた意図も不明である。
吉田市長は市長就任後、このコミュニティ推進員については、「ひとつの例」としてあげたと逃げを打つが、マニフェストの意味が分かっていないのではないかと疑いたくなる。
◆「留守家庭子ども会」5時まで無料、延長分有料で決着か・・・
吉田市長が、最もこだわりを見せて来たのは、留守家庭子ども会(学童保育)の無料化だったようである。
もともと、制度利用者の増加を受けて、受益者負担の原則からも有料化するということで、民主党も含め賛成多数で決められたはずだった。
市長選で「再無料化」を公約として掲げた吉田市長は、どうしても譲れなかったらしい。
もっとも、マニフェストには無料化のための事業費を2億円と記し、就任直後の市民団体による公開質問への答えで、少なくとも9億近くかかることが判明、不勉強なままマニフェストをつくったことが明らかとなっている。ここでもマニフェストに対する市長の安易な姿勢が見られる。
留守家庭子ども会については、吉田市長側と、無料化に反対する保守系会派の双方の顔を立て、5時までを無料とし、延長保育分については有料化する方向との情報もある。
留守家庭子ども会を利用する家庭の14%とされる延長保育利用者の負担額は、全体の事業費からするとわずかにしかならない。それでもこの策こそ、最良の落としどころとされている。
いずれにしても、無料化したことで保育の質が落ちたり、施設整備が停滞することがないよう注文をつけておきたい。また学童保育に対する国の補助金は1校につき70人を最大規模としており、博多区など既に100人を超える小学校では、近い将来補助金対象をはずされる可能性もある。
利用者が振り回されることだけは、絶対に避けていただきたい。
つづく
※参照:マニフェスト
https://www.data-max.co.jp/shisei/2007/11/mail11-30/s-11-30_01.htm
https://www.data-max.co.jp/shisei/2007/11/mail11-30/s-11-30_02.htm