《結局、国がものを言う》
PIステップ3に示された3種の現福岡空港拡張案は、大型公共事業に対して懐疑的な一般県民には受けがよかったことや、新空港建設に及び腰になっているといわれる国の本音を物語るものだ、などという憶測も生み新空港建設を悲願とする福岡都市圏の経済界にとっては頭痛の種のようだ。
とはいえ、PIステップ3には新空港建設の比定地も現空港拡張3案に負けず劣らず6カ所示されている。
いくぶん旗色が悪い原理的新空港建設派にとって、福岡空港調査連絡調整会議が示したこの6カ所の新空港建設比定地は、いわば守城の内堀だ。
この内堀を一層堅固に築き直すことで足下を固め、守勢から一挙に攻勢に転じようという、いじましいとも言える動きがあった。
地元企業経営者有志が「新福岡空港促進協議会」の橋田紘一幹事長(九電工社長)をゲストに迎え新空港建設に向けた決起集会とおぼしき集会がもたれたことがあったのだそうだ。
この会合は定員400名ほどの会場で開催され「立ち見も出る盛況」(主催者)であったそうだ。が、地元企業有志が心をこめて、「福岡に新空港を!」
と声をかけたにしては400名に過ぎない定員会場そのものが狭小なのでは?とバンクーバーから見ていると思うのは人ごとゆえだろうか。
とにかく、この会合は大成功という総括で終わっている。アラスカの山々から流れ込む氷河。切り立ったフィヨルドの壁をバックに吠えながら跳ね上がるクジラが海面を腹でたたくような様子を日常見ている私からするとなんとも慎ましやかに大成功と見えるのだが。
そんな、経済界のなんとも慎ましやかな努力を無視し、新空港建設案を葬りさるかのごとく、国の福岡空港総合的調査専門委員会(委員長/森地茂・政策研究大学院教授)が新案を発表する。
それが、ここの所、ふるさと福岡で空港問題について関心を持つ人ならば誰でも立場の違いなく注目した6月30日の発表だ。
PIステップ3の拡張案3案とは別に、かさ上げした滑走路を建設するという拡張案の「改良案」なるものが発表されたのだ。
これは、福岡空港の混雑対策について議論する人々にとっては、全く頭ごしの発表であり、特に新空港建設に向けて地道に世論形成を行なうなどの努力をしている地元経済界にとっては寝耳に水の話であったようだ。
それは新空港建設にむけて議論を進めていくうえで、頼みの内堀を巨大なモンスターが現れ、両の手の平にした土砂で一瞬にして埋められてしまったような事態であった。
結局は国が決めるのだ、ということが形で示された事態が発生したとも言える。
田中勝(バンクーバー在住)
つづく
━━ 福岡空港を考えるサイト
福岡空港調査連絡調整会議 http://www.fukuokakuko-chosa.org/
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