《袋小路に追い込まれている新福岡空港建設論議−1》
4月末に経営コンサルタントの大前研一氏が「新福岡空港にみる財界人の駄目さ加減」というタイトルのコラムを日経BPに寄せていた。
氏は、北部九州に新たな空港を建設するのであれば、九州各県からアクセスが便利な佐賀県鳥栖だとしたうえで
「ではなぜ、この鳥栖に空港ができないか。福岡の財界人の発言力・影響力が強いからだ。鳥栖は佐賀であって福岡ではない(そのくせ今度の九州新幹線では博多の次が佐賀県の鳥栖で、その次が再び福岡県の久留米である。鳥栖は久留米よりも近いのに福岡の利権とはならない、というのがしゃくなのだ)。面子も立たないし、余計な工事をしないで済んでしまうとあっては自分たちに金も落ちない。だから反対しているのだ。」
「わたしからみたら関空を推進していた財界人にはろくな人がいなかったように、広島にも福岡にも大局的、長期的、かつグローバルな視点を持った人材が不足している。」(日経BPSAFTY NET)
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/a/128/
かなり辛辣な批判だが、現在行なわれている福岡空港の新設論議を外野からみると、福岡都市圏という狭小な範囲での議論にみえるということだ。
バンクーバーのアトリエからみていても新福岡空港の建設を、と訴えるふるさと福岡の経済界の議論は情けないくらい視野が狭い。
アジアとの大交流時代の到来などという大袈裟なことを経済人が口にする一方、そのアジアからの人を受け入れるために建設しようという新空港の比定地は福岡都市圏の利用者が便利な距離の圏内であることが望ましいのだという。
沸騰するアジア経済の流れのなかでうごめく人の流れを取り込む窓口として空港の整備を考えるという立場であれば、福岡都市圏経済に限った狭い範囲でものを考えるのではなく、北部九州一体から九州全体を視野に入れた空港建設構想があって然るべきと、ネィティブアメリカンの言語を研究しながら合気道の師範としてバンクーバーに住む、世捨て人然とした私のようなものでも思う。
まして、空港のような交通インフラの整備は、都市圏の将来像をみすえて行なうもので、開港後の成功、不成功や現状の財政状況に遠慮していても始まらない、というような新空港建設強硬論を展開する御仁もおられる。
であれば、なおさらのこと、現在案として上がっている、現空港の離発着回数を1,5倍程度向上させるに過ぎず、しかも福岡都市圏という限定された範囲の利用者に資する位置に単なる代替空港として新空港を建設するというようなことは一層愚かなことだ、とも思う。
田中勝 (バンクーバー在住)
つづく
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