《切れてしまった頼みの綱》
新福岡空港の建設を悲願とする福岡都市圏の経済界にとって、憂鬱の始まりはPIステップ3に現在の福岡空港へ2本目の滑走路を建設するという増設案が盛り込まれたことであった。
報道でも増設案がクローズアップされ、大型公共事業に対する懐疑的な県民世論を助長すると同時に、国も新空港建設に対して消極的だと印象を一般に与えるからだ。
実際、非公式な場に限られるが国土交通省の空港関係者の間から、外海への空港建設という技術上の問題と、財政上の問題から福岡に新空港を建設することは難しいのではないのかという発言がよく行われているようでもある。
それにしても、PIステップ3には滑走路の位置や事業予算まで示された増設案に比べて、個別には具体性にかけるとはいえ6カ所に及ぶ選定地を比定した新空港建設案も示されていることは事実だ。
経済界としてはそれら比定地をたたき台にし、PIにおける議論を通して主導権をつかみ不満と憂鬱を払拭するほかなかった。逆に言えば、PIにおける議論のみが劣勢挽回の頼みの綱ともいえた。ところが、今回、PIにおける議論を無視し、頭ごなしに国主導で増設案に改良型が加えられ発表されたのだ。
頼みの綱が切られてしまう。
田中勝(バンクーバー在住)
つづく
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