《拡張案への誘導》
発表が行われて以来、話題を呼んでいる福岡空港調査連絡調整会議の新たな拡張案は、現滑走路の西側の土地を数メートルかさ上げし、2,500メートルの新滑走路を増設する、というものだ。
これまでPIステップ3で示されてきた拡張案3案が、いずれも新たな土地買収や高速道路のつけ替えなどの必要性があったのに対して、新案は現在の福岡空港の敷地内で新滑走路を増設する計画になっており、これらの問題を考える必要がない。
この新案は、発表が行われた6月30日の夕刊から、翌日の各紙朝刊上で「改良案」として掲載された。
新空港建設には、1兆円を超える建設費用が見込まれるようで、論外のような気がするが、拡張案でもこれまでの3案は2,500億円から7,500億円の費用が必要とされていた。ところが今回の新案は2,500億円以下の費用で済むという。
この連載のいくつか前に福岡県内のある市長が、「PIステップ3は新空港建設案の方で空港建設の選定地を10カ所も示しているが、個別に可能な発着回数や事業費などの試算を出してはいない。一方、増設案は滑走路の具体的な敷設位置や個別の事業費まで示されている。国ははじめから増設案を主に福岡空港の将来像について考えている。しかし新空港建設案の方には具体性がないものであり、麻生知事の考えも一緒だ」と言っていたということに触れたが、麻生知事の考えは別として、今回の改良案なる新案の発表は全くこの発言を裏付けるかのような内容だ。
既にPIの論議のなかで3案並んでいた拡張案に、わざわざ国土交通省専門委員会がこのタイミングで、前案がかかえる問題を解決する内容を持った新案として「改良案」を発表することは、世論の誘導であり、拡張案というゴールに向かう上での環境整備ともとれる。
PIでの論議こそを、劣勢にある新空港建設案の失地回復を行なうための内堀としていた福岡都市圏経済界は、この発表に慌てるが、同案に対するものとして新聞紙上に掲載された経済界代表のコメントには説得力がなかった。
その説得力のなさは、新空港を建設するべし、という優れて国家的規模の論議を行っているにもかかわらず、視点が狭小に陥っているからではないのか、とバンクーバーのアトリエから見ていると思えて仕方がない。
田中勝 (バンクーバー在住)
つづく
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福岡空港調査連絡調整会議 http://www.fukuokakuko-chosa.org/